カツアゲって、揚げ物じゃないんですか?

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 計算では走ればギリギリ間に合う時間だった。私は猛ダッシュを10秒頑張った。  ところが運悪く、途中の道が工事中で迂回を案内する立て札で塞がれている場所に出くわしてしまい、仕方なく迂回してから五分。  私は気づいた。 「完璧に迷った!」  迂回の立て札をもっと良く見ておけば元の道に出られたはずなのに、感覚でこっちかな〜って思った方に来てしまった。  いつもなら車のナビで必ず目的地に到着していたから、迷うという出来事さえ初めてだった。  心臓がバクバクするし、息切れがするし、汗が出る。あ、それは走ったせいか。  とにかく、経験した事のない超ピンチだった。 「やばいよ、遅刻しちゃう! うぅ……初日だけでも送ってってもらえばよかったかも…いやいや、そんなかっこ悪いことできないし……」  ぶつぶつ呟きながら歩いていた時、人の声がした。  反射的にそっちを見た私の目に映ったものは、他校の制服を着た怖そうな男たちに囲まれてしまっている私と同じ高校の制服を着た男子だった。  同じ制服。  そこだけ見て安堵した私は、状況を把握しないまま彼らに声をかけた。 「あの……」  何をしているんだろう、と思ったのはその後だ。 「ああ?」  怖そうな男たちが一斉に私を見た。囲まれていた制服男子は、そんな彼ら視線をちらちらと見て隙ありと見たのか、囲いから抜け出てそのまま走り出していった。 「あっ! ちょっと待って! 道を……」  教えて、と言いかけた時にはもう二秒前の彼の二の舞になっていた。 「お嬢ちゃん、あんた──カネ持ってる? ちょっと貸してくんねえかな」  彼らの一人が私に向かってそう言った。
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