カツアゲって、揚げ物じゃないんですか?

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 さてここで問題です。  怖そうな男子高校生たちに囲まれた時の、普通の女子高生のベストな返答を述べよ。  1:「そんなお金はありません!」とダッシュで逃げる。  2:「少しだけなら……」と応じてなんとか逃してもらう。  3: とにかく泣いて助けが来るのを待つ。  普通はこの三択のどれかなのですよ、と後で矢野に教えてもらったけど──この時の私の答えは、残念ながらどれでもなかった。 「お金? 腐るほどありますけど……どうしてあなたたちにお貸ししないといけないんですか? お友達でもなんでもありませんのに」  初対面でいきなり金を貸せとは非常識な。  呆れを通り越して憤然としてしまった。  すると、相手の方もポカンと間の抜けた顔つきになった。 「お金を借りるなら他人よりまずお父様、お母様からが筋でしょう?」 「バーカ、それじゃただの小遣いの前借りじゃねーか! おまえ、カツアゲ知らねえのかよ」 「カツアゲ? カツも油もないじゃありませんか。さっきからおかしなことばかりおっしゃいますね」  その時、私はピンと閃いた。 「あっ、分かりました! あなたたち、もしかして──不良ですね⁉︎ ええ〜っ、本当にいらっしゃるんですね! お話の中に出てくる伝説上の生き物じゃないんですね!」  初めて出会った『不良』に、私は思わずはしゃいでしまった。 「すごーい! 本物! 一緒に写真撮ってもいいですか? 矢野──あ、今日はいないんだった。ごめんなさい、カメラは執事が持っているので、また今度の機会に」 「何だこいつ。頭イカれてるのか?」  怖い顔で睨まれて、私はまたハッとした。  ──いけない。  私ったら、ちょっと変な態度取ってた?  ダメよ、愛姫。  今の私は普通の女子高生。怪しまれてはいけないの。  自分が資産家の娘だと知られたら、また大変なことになってしまう!
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