幸せな朝

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「す、すごいですね! トイレが室内にあるなんて!」 「だろ? 信じられないよな。しかも、シャワーもついてるんだ」 「わあ、ホテル並みじゃないですか。さすが宮藤家ですねっ」  自分のほっぺを思い切りつねりたい。  こんなことで驚いている真田さんが可愛すぎて、可愛すぎて、私が困る!  ニマニマしてしまいそうになるのを必死で堪えていたその時だった。  真田さんが眉間に皺を寄せて、こう言った。 「けど、やっぱり一番困るといえば、陰険な執事と邪魔ばかりしてくるお嬢だな」  がーん!!  やっぱり私、邪魔だった⁉︎  頭がクラクラしそうだけど、思い切って聞いてみる。 「お嬢様が、どんな邪魔をしてくるんですか……?」 「俺がせっかく洗った皿を何枚も落として割ったり、やっと仕事が終わって寮に帰ろうとしたら近づいてきて無駄話を延々としていったり、先輩のメイドに仕事を教わっていたら俺から横取りするみたいにそのメイドとしゃべり出して、俺の時とは打って変わって優しい態度を見せつけてきたり。俺への当てつけなのかな。あと、夜中の二時頃に電話をかけてきたこともあった。退屈だから話し相手しろって。まったく、性悪でわがまま放題で困ったお嬢だよ」 「へ、へえ〜……。大変なんですね……」  泣きそう。  お皿の件は反論のしようもないけど、労いの言葉を無駄話と捉えられていたり、メイドにも優しいお嬢様をアピールしてたのに当てつけだと思われていたとか。痛い。辛すぎる。  イメージアップ、全然できてない。っていうか、ダウンになってる!  めっちゃウザがられてる! 「お嬢に比べれば執事の方がまだ分かりやすくていいな。俺を虐めてやろうって気持ちが態度でビンビン伝わってくるから、俺も負けるかって思えて頑張れるよ」 「そ、そう……。良かったですね」  もう、自分の相槌が合っているのかどうかさえ分からない。  いやいや、負けちゃダメだ。  今からでもイメージアップさせなきゃ。 
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