幸せな朝

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「でも、宮藤家のお嬢様ってすごく美人だって聞きましたけど……私なんかと違って、華やかで素敵なんでしょ……?」  自分で自分を褒めるって変な感じ。外が良くても中がダメって一番最悪だし。  でも、もう何でもいいからお嬢様への肯定的なポイントが欲しかった。  外見の良さだけが私の取り柄だ。  お願い、そこだけは肯定して!!  祈るように真田さんを見つめる。  すると真田さんは、私をチラッと見てボソッとこう言った。 「……俺はあんたの方がいいと思うけど」   「えっ……⁉︎」  メガネがずり落ちそうになるほど驚いて、私は慌ててメガネを押さえた。  今、真田さん、なんて言った⁉︎  私の方がいいって? 何? どういう意味⁉︎ 「ど、ど、どういうことですか?」 「だから……言葉通りだよ」  真田さんは私と目を合わせようとしない。 「でも、私、全然華やかじゃないし、素敵じゃないし、こんなに地味ですよ? お嬢様の方がずっとずっと綺麗じゃないですか」 「あんた、自分じゃ気づいてないんだな」  謎の言葉を残して、真田さんはわざとスピードを上げる。  やだやだ、待って。  本気で分からない!  真田さんはなんで綺麗な見た目のお嬢様よりこんな地味な私を褒めてくれるの? 目がおかしいとしか思えない! 「待ってください、真田さんっ」  パニックのまま追いかけていくと、急に真田さんの歩みが止まった。  気づけば、正面にニヤニヤした顔の集団がいた。 「よう、真田。隣にいるのはあの時の地味子か? なんだ、お前らデキてたのかよ!」  以前、真田さんにびびって逃げ出した情けない不良集団だ。  こんな時に性懲りもなく絡んでくるなんて、なんて嫌な人たちなんだろう。 「何よ、あなたたち! デキてるって何? カツならできてません! カツを揚げたいならどうぞ、別の場所で揚げてきてください!」  ビシッと決まった! と思った私の啖呵(タンカ)は、何故か彼らの爆笑を誘った。 「相変わらず変な女だな! お前にはお似合いだよ、真田!」 「お似合いだなんてそんな……照れちゃいますからやめてください」  思わずモジモジすると。 「皮肉だよ、バーカ!」  ギャハハハハ、と下品な声で笑われた。 「地味子はその気じゃねーか! 良かったな、真田!」 「地味子のくせに女の顔してんじゃねーよ。キモ!」  ああ、この人たち、本当ムカつく!
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