誤解しないで

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「きゃあああっ! なんで入ってくるのっ⁉︎ 出てってよ!」 「元気そうだな。やっぱり仮病か。そうまでして俺に嫌がらせがしたいのかよ」  真田さんはベッドのそばまでやってきて、布団から顔だけ出した私を睨んだ。 「話がしたいだけなのに面倒くせえことすんなよ。すぐ終わる」  矢野はやれやれという顔つきで開け放たれていたドアを閉じた。   「……話って何?」 「今度の日曜、外出したい。許可をくれ」    ゆみ(わたし)とデートする気だ。  嬉しさと恥ずかしさで顔が熱くなっちゃう。 「外出理由は?」 「人と会う約束をした」 「それは……どんな人なのかしら? もしかして、好きな女の子とか……?」 「お嬢には関係ないだろ」 「か、関係あるもん! 私はあなたのご主人様よ! 下僕のことは何でも把握しておきたいのっ」  じっと見つめていると、真田さんは照れたように横顔を見せた。 「どうなの? す、好きなの? その子のこと」 「うるせえな、知るかそんなこと」  よく見ると首筋が赤くなっているみたい。  これはもしかして……本当にゆみ(わたし)のことが好き?  布団の中で私の心臓がドキドキしてきた。 「好きなら好きって、はっきり言って」 「また命令かよ」 「命令っていうか……知りたいだけ」  真田さんがこっちを向いた。目が合う。  ドキドキ。ドキドキ。  鼓動が聞こえてしまいそう。 「お嬢」  真田さんが不思議そうに私の顔を覗き込んだ。 「さっきから気になってたんだけど、なんで布団にもぐったまま話してんだ?」  ぎくっ。 「仮病はもうバレてるぞ。寝たふりする必要あるか?」 「け、仮病じゃないもん! 本当に具合が悪いの!」 「本当かよ? 嘘くせえな。何か隠してるんじゃねえのか」  怪しむ表情の真田さんが探るように私をジロジロ見る。  絶体絶命の大ピンチ! 「真田さん。ちょっとよろしいですか」  ずっと黙って見守っていた矢野が、その時ついに動いた。  っていうか遅い! もっと早く助けてよ!  矢野は布団の端を握りしめている私をチラッと見て、ため息をついた。 「姫、こうなったらもう仕方ありません。正直に告白しましょう」 「えっ?」  正直にって、何?  どこを正直に言ったらいいの?  パニックで何も言えない私に代わって、矢野は真田さんにこう告げた。 「申し訳ありませんでした。先ほどは嘘をついておりました。姫は便秘ではありません」 「やっぱりそうか」 「はい。ここだけの話なのですが……」  今度はどんな言い訳をする気?  うまい返しに期待していた私に手のひらを向け、矢野は言った。 「姫はただ今、裸でいらっしゃるのです。大変申し上げにくいのですが……姫には露出狂の(へき)がありまして」  うおおおおおいいいい!!!
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