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「露出狂……」
真田さんがド変態でも見るような目つきで私を見た。
「ち、ちがうから! 嘘つかないで、矢野! 私は露出狂なんかじゃないわ!」
泣いちゃう。
確かに今はほとんど裸だけど、好きでこんな格好になったわけじゃないのに!
「真田さんの前ではさすがに恥じらうのですね。私の前では平気で自由なお姿を晒すくせに。いくら身内同然だからといっても、私にももう少し気遣いというものを見せていただきたいものですよ」
矢野は真に迫った困り顔でため息をつく。
「本当なのか? その話」
半信半疑の真田さん。そのまま疑ってくれていたらいいんだけど、矢野は自信たっぷりに「はい」と頷く。
「証拠を見せましょうか?」
矢野は私の掛け布団をちょっと引っ張った。デコルテが見えそうになって、慌てて布団を引っ張り返す。
「だ、だめ! ブラが見えちゃう、やめてーっ!」
ハッと気がついた時には、真田さんはもう部屋を出て行こうとするところだった。
「……また出直す」
バタン、とドアが閉まる。
「ああああああああああ〜〜!」
完全に露出狂だと思われた! 私は布団を抱きしめて泣いた。
「なんであんな嘘ついたのよ! 矢野のバカ! あんたなんかクビよ!」
「私はお礼を言われるべきだと思いますが? あのままでは姫はあの男に裸を見られていたかもしれません。私と二人きりの室内で下着姿になっているというこの状況、もしかしたら私と姫が淫らな行いをしていたと疑われる可能性だってあったのですよ?」
私はそっと顔を上げた。
確かに、矢野の言う通り、普通だったら私と矢野の関係を疑われても仕方がない状況だった。
「嘘というものは少しの真実を織り交ぜたほうがバレにくいのです。姫が裸だったことはさっさと暴露して、別の理由づけで疑いの目を逸らすのがベストと考えました。それとも姫は私との関係を疑われる方が良かったですか? 露出狂だと思われるのと、どちらが良かったと思います?」
「それは、露出……いや、どっちも嫌だわ!」
私はやっぱり布団に顔を突っ込んで泣き伏した。
「まあまあ、姫のド変態っぷりが多少増しただけじゃないですか」
矢野は私の肩を優しく叩いた。
多少じゃない気がするのは私だけか。
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