episode⑥

6/20
前へ
/159ページ
次へ
「雅、明日プロポーズの日だよ?」 あの日、すっかり誕生日を思い出した私は、サプライズでなくなったことを冷やかすように‘明明後日だよ’‘明後日だよ’と連日言っていた。今夜はお泊まりでない日だから電話で話している。 ‘指折り数える楽しみがなくなって悪いな’ 「次にまた何か数えるよ。あ、今日はお兄ちゃんの誕生日なの」 ‘今日?’ 「そう。1日違い」 ‘すごいな’ 「毎年ケーキを2日続けて食べてたよ」 ‘まとめてじゃない両親を尊敬するな’ 「一度もなかったね。小さいケーキだけれどお兄ちゃんのケーキと私のケーキは別々に用意してくれた。さっきお兄ちゃんに電話したの」 ‘そうか’ 「でも…多分彼女と一緒にいたね、あれは」 ‘どうして分かる?’ 「‘おめでとう’って言っても、何を言っても、返事が短かったから何となく…別にいいけど‘明日私はプロポーズされるから電話いらないよ’って言って電話をきったら、すぐに何度もかかってきて面倒だからスルーした」 ‘今は結愛の話中が続いてるってわけか…気の毒だな’ 「そう?うるさいなら、このあと電源切って寝ようかな?」 ‘電源切るのは無し。俺とも連絡が取れなくなるからダメだ’ 「分かった…じゃあ…‘睡眠を妨げるなら着拒する’って送っておく」 ‘頑張って一人で寝ろよ。明日は一緒にな’ 「ふふっ…イエスかノーで変わるんじゃない?」 ‘ノーでも付き合いをノーと言われるわけじゃないんだから一緒だ。何も変わらない。安心して、結愛’
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6641人が本棚に入れています
本棚に追加