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「さっき総務で在庫状況の表を見たんですけれど、アパレルの在庫ってあれで通常なんですか?頭がくらくらしそうになりましたけど…」
「結愛ちゃん、誕生日にも真面目に働いているのねぇ」
当たり前過ぎることを言う玲から咲哉さんに視線を移すと
「うちは少ない方だと思う」
と返ってきた。
「あれで、ですか?」
「セレクトショップだからブランドが掲げる‘シーズン’に振り回されない」
「アパレルに無縁の者に、もう少し分かるようにお願いします」
「例えば、今年のFWと言ってブランドから出された物は来年の秋冬には販売できない」
「はい、それはわかります」
「うちも、ある程度の規模のブランドの取り扱いはあるが、シーズン商品ではなく定番商品しか仕入れてない。全店に同じ商品を置くためにそういうブランドの商品も必要だ。安定した数が必要ってこと」
「はい」
「あとは全店に置けるかどうか…10点ほどずつ服飾作家やデザイナーから仕入れている。だから極端に言えば、去年売れなかった物を来年売ってもブランドからクレームが来ない。だから店舗から引き上げてネットに乗せたり、店舗間で商品を回すことが出来る」
「ブランドのベーシックアイテムは強いし、あとは人と被らないようにしたいって人が来てくれるから売り上げはずっと上がってるわよ。常々セールをしているような店を最近見かけるけれど、ああいう安っぽい店にはしたくないと思うわね」
そうなんだ…でも恐ろしい金額だった。
「在庫について、何か思いつきがあればいつでも言ってくれ」
「はい…今はただ驚いただけですけど」
そう答えて、ここでの仕事をする。そして帰りに
「咲哉とあたしからプレゼント」
玲からM-shionの小さなショッパーを受け取った。
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