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「どうぞ、結愛さん」
「失礼します」
2階の住居玄関で雅のお母さんは私が名乗る前にそう言ってスリッパを進めてくれた。
「玲は?」
「まだ寝てるんじゃない?」
「ふーん」
雅にすれば継母なのだが全くもって普通の親子だと聞いているので、そこの緊張感は私にもない。大きなソファーの並ぶリビングに着くと
「結愛さん、いらっしゃい。少し待ってください…珈琲の手が離せない」
続くダイニングキッチンの方からチラッと顔を出した雅のお父さんが言う。
「お父さんね、サイフォンで淹れるのにハマってるのよ。ペーパードリップも珈琲メーカーもあるのにね」
「サイフォンって、フラスコの?」
「そうそう」
「寝坊したわぁ~結愛ちゃん、来てるぅ?」
「来てるよ~おはよう、玲」
「きゃー結愛ちゃんがうちにいるのね。おはよう」
「ぐぇ…っ…キツイって…ギブ…」
「また…ごめんねぇ」
「だいじょぶ…玲、すっぴんもめちゃくちゃ綺麗だね。トゥルントゥルン…」
「ありがと~」
「今日、仕事行くの?」
「行くわよ~」
「お疲れ様です」
玲のキツイハグから脱出した私の背中を雅が撫で、玲は頭を撫でる。
「結愛さん、うちの末っ子確定ね」
「そうだね。娘が出来るなんて嬉しいね。さあ、珈琲が入ったよ」
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