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「お口に合えばと思うのですが…有名店のものではないですけれど、私の家族全員がこの蒸し羊羮が大好きなので、どうぞ」
「ご実家の近く?」
「はい」
「わざわざ買いに行ってくれたの?」
「わざわざ…いえ、実家に泊まりましたから」
「珈琲にもいいわよね。あたし、いただきたいわ」
「そうだね。お持たせで失礼だけれど、一緒にいただこう」
お母さん、玲、お父さんが言うと雅が私の背中をまた撫でた。
「咲哉さんにも買ってくれば良かったね…忘れてた」
「また今度でいいだろ」
「この栗蒸し羊羮はクリスマスくらいまでしかないの」
「それまでに買いに行けばいい」
「うん。あんパンとドーナツよりさっぱりの甘さ…何て言うだろうね」
私と雅が話していると、羊羮を切って雅のお母さんが戻って来た。
「咲哉くん、最近うちに来てないわね。結愛さんからも来るように言っておいてくれる?」
「はい、分かりました」
「あ、美味しいね。この控えめな甘さがいいんだな。母さんも食べてごらん」
「ええ、いただくわ」
穏やかそうなご夫婦だ…玲の勢いはどこから来たのだろう…
「ああ、美味しいわねぇ。咲哉は一本丸かじりするんじゃない?」
「玲…恵方巻きじゃないよ…」
「あ、それいいわね。咲哉に羊羮…うふふ」
「ダメだって。体に悪いから…もうお砂糖中毒っぽいでしょ?」
「結愛さんの言う通りだね。不思議と咲哉には虫歯がないんだが」
「「うそっ(だろ)」」
思わず、私と雅の声が重なった。
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