最低で最高な誕生日

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* 「お母さん、お願いっ! クリスマスも誕生日も、プレゼントはいらないから!」  顔の前でパチンと手を合わせ、お母さんに頼んだ。十二月二十七日、十歳の誕生日に友だちを家に呼んで誕生日会を開く。それさえ出来るのなら、誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントも、両方諦めたって惜しくない。他に欲しいものなんて無い。 「そうねぇ、紀子がそんなにも誕生日会をしたいのなら、仕方ないわね」 「やったー! お母さん、ありがとう!」  この家に引越して来てから初めての誕生日。前に住んでいたキッチンと二部屋しかないアパートだったら、友だちを呼びたいなんて思わなかった。今の家はちゃんと自分だけの部屋がある。引越しに合わせて買ってもらったばかりの白いベッドと机は、ハートのモチーフが可愛くてお気に入りだ。この部屋でパーティをすれば、最高で特別な誕生日になる。 「それでね、ケーキはいつもの花月堂のじゃなくて、駅前のケーキ屋さんのにして欲しいの」 「え? どうして? 紀子、花月堂のケーキ好きでしょう?」 「うん、でもね、お誕生日会に呼ぶ真理ちゃんが、花月堂は嫌なんだって。駅前のアンジェリカの方が美味しいからって……」
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