第9話【対策本部】

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第9話【対策本部】

 東北電力本社に一報が届き、そこから先、政府機関に話しが拡散するのは早かった。国会議員、閣僚、そして内閣総理大臣へとあっと言う間に知らせが入る。誰もが会話の中に「テロ」というワードを挟んで行く。  警視庁に対策本部が構えられるのには時間がかからなかった。メインとなる大会議室の入口。 『秋田原子力発電所テロ対策本部』と掲げられたボード。会議室というよりホールといった感がある広い内部は正面にスクリーンが3分割されており、一段高い壇上には警視庁上層部の面々に混じってテロ特殊捜査課係長の城之内の姿も見受けられる。  会場にはテロ特殊捜査課の全員が集合しており、最後方にはコルトとビショップの姿があった。  秋田原子力発電所から親会社である東北電力に連絡が行き政府側に一報が届いてから直ぐに各省庁へと繋がり、対策本部が出来上がったわけである。  壇上中央に警視庁副総監が立ち、マイクで事件の経緯を説明して行く。 「秋田原子力発電所を占拠しているのは5体のアンドロイド犬のみでその五体に関してはロシア語を話している事から旧ロシアからやって来たものと思われます。現地の職員や作業員は今のところ負傷者もなく無事であり、占拠しているアンドロイド犬らは日本政府との話し合いを要求しています、現在判明しているのはそこまでです。間もなくオンラインで現場と繋がる予定であります」  会場内がざわついた。 「どう見るね? 川本」  美咲の隣に座っていた黒川が小声で問いかける。 「はい、旧ロシアから……あきらかにアセアン紛争との関連ですよね、つまりは……」  美咲が言いかけたところを黒川が割り込む。 「いよいよ日本の番ってわけか」  一方、会場後方に控えたコルトとビショップ。 「5体のアンドロイド犬……なぜ旧ロシアに」  ビショップがそう言う。コルトは神妙な表情を浮かべる。 「奴の居場所はともかく、白井光三郎があきらかに旧ロシアに加担してる証拠だ。それにしても、原子力発電所を狙って来るとはな……日本人全員を人質に取って一箇所に集めたようなもんだ」 「うむ。ただ、気になるのは5体のアンドロイド犬だ。旧ロシアに存在するなんて噂でも聞いたことがない」 「それだビショップ、本部の志垣に連絡をして立て籠もった連中の情報を集めさせろ」と、コルトとビショップがやりとりしている時、場内がどよめいた。壇上のスクリーンに発電所内制御室の様子が映し出された。
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