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第10話【宣戦布告】
ひとつのスクリーンに職員や作業員たちの怯えと不安の表情が映し出された。どうやら監視カメラを手動操作でアングルするよう命じられているのだろう。やがて中央のスクリーンにインパクトのある立髪が特長的なバイラスの姿と、背後に控える4体の姿が映し出されると、場内から何とも言えないざわめきが起こった。
「やあ、日本の皆さん、はじめまして」
バイラスの最初の言葉、流暢な日本語での落ち着いた挨拶。表情からはあきらかに自信と余裕のようなものが滲み出ていた。
「我々は旧ロシアからやって来た。率直に言おう、我々の目的は日本国を占領下に置くことであり、その任務を遂行するまでは撤退は無いと思っていただきたい」
バイラスの言葉に会場内のざわめきが増した。壇上にいる警視庁上層部の人間や電力会社関係者たちの表情が険しくなる。
「宣戦布告か、随分大きく出たな。それに奴の面構え、余程自信があると見た」
コルトが呟いた。スクリーンのバイラスは続ける。
「さて、中国でのアセアン紛争は我が国、旧ロシアが加担したにも関わらず失敗に終わった事はこの会場にいる者も周知の事実だとは思うが、残念ながら我らには前線での任務は命じられなかった。つまり、今回はあの時と状況が違うという事を肝に銘じて決断をするよう勧める。こう言っちゃ何だが、我々の力を侮らない方が良い」
バイラスの言葉は自信に満ちており、説得力に長けていた。バイラスは続ける。
「ただし、我々は非情なテロリストとは違い、平和的に解決出来るのであればそれを望んでいる。つまりは無条件降伏だ。そうすれば無駄な血を流す事もなく終わる……。まあ、そうは言ってもそれを容易に聞き入れるとは思ってはいないが。特に、これを見ているであろう紛争時に介入していた我らと同類の2体はな」
バイラスがニヤリと笑う。会場内にいた人々が後方にいるコルトとビショップに視線を向けた。バイラスらがいる現地の発電所制御室と東京との中継画面に会場内の様子が映る。
「そうか、その会場に来ているのか? ではちょっと挨拶がしたい。カメラを向けてくれるかな」
会場で現地との中継を担当している放送技術班らが壇上の隅に控えたディレクターの指示を待つ。ディレクターは壇上の上層部関係者に確認を取る。
「奴らは既に2体の事を知っている、構わん、カメラを向けてくれ」
ディレクターはインカムで場内にいるカメラマンらに指示を伝える。1台のカメラが会場後方にいるコルトとビショップにズームインをする。
「やあ、我が同類。キミらの事は我々の間でも有名でね。是非1度会いたいと思っていたよ」
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