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第11話【追い詰められた国】
現地のモニターに映し出されたコルトとビショップの姿を見て、バイラス以外の四体は資料として写真でしか見た事がない二体に興味しんしんの表情を浮かべる。特にファズの目はギラついていた。
「あれが最強のS型……」
ファズの呟きがバイラスの耳に入った。バイラスはモニター越しに対面するコルトとビショップを舐めるように見返す。
「当然キミらが介入せざるを得ない状況は作ったつもりだ。直接会えることを楽しみにしているよ」と、バイラスは締めくくり、再び場内に向けて語りだす。
「時間はたっぷり与えよう。日本人は非常に礼儀正しい国民性で国としても秩序を持ち治安も良い、世界でも類を見ない良国だと聞いている。我々は良い返事を待っている」
と、スクリーン越しの中継は切られた。会場内は急に騒がしくなった。
「占領下だの無条件降伏だの、これではまるで戦争ではないか!」
壇上にいる城之内の隣に座る警察関係者が声を張り上げた。
「まさかアセアン紛争をこの日本で起こすつもりなのか?」
「あれは明らかに宣戦布告ですよ!」
どちらも正解だ、と城之内は思った。壇上では副総監が秋田原子力発電所の現在の状態を電力会社の担当官に質問をしているところだった。別の会場では報道記者会見の準備が進められており、マスコミの記者たちが集まり始めている。
警視庁関係者テロ特殊捜査課の面々が座る席で落ち着いていたリーが口を開いた。
「彼らは誘ってるね、コルトとビショップを……単に紛争を起こすためだけ来たわけじゃない、そんな気するよ」
「リーの言う通りだ、何か裏があるな」
黒川がリーの言葉に頷いて言った。
城之内の背後から肩を叩いて来て壇上袖に連れ出したのは警視庁テロ特殊捜査課犯罪対策室課長補佐の武田だった。まだ三十代後半の武田は最近までSP(要人警護)に籍を置いて現場で活躍していた男だ。現在のポジションに異動してからは城之内と本庁との窓口役となっている。武田は城之内に頭を下げ小声で話し出す。
「城之内係長、上から直ちに特捜を現場へとの指示が出てます。私も同行しますが、行けますか?」
「……わかった、じゃあヘリの準備をお願い、皆んなと一旦戻るから本部で合流しましょう」
「了解しました」
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