第13話【北の同類たち】

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第13話【北の同類たち】

 車から降りた雷電は、遠回りしながら発電所の周囲をくまなく見て回った。比較的に人間が少ない場所は発電所の裏側付近で、外側の外壁と内側の鉄条網とで二重に閉ざされてはいるが、明らかに人は少ない。  雷電はまず五メートルはありそうな外壁にジャンプし、外壁の上に跳び乗った。体を低くし、内側の様子を探る。発電所の全体像が見えた。張り巡らされた内側の鉄条網の向こうに侵入口と見られるドアが左右に分かれて二つあり、その周囲には警察官らが数人立っている。雷電はドア付近に注視する。自動制御された監視用の防犯カメラが右、中、左、と規則正しく動いていた。周波数を合わせた下川の無線機に雷電が脳内無線で周囲の状況を知らせた。 『やはり正攻方で侵入するのは無理だぜ、人が多過ぎる、強行突破しかねえぞ、下川!』 「慌てるな雷電、もう少し様子を見よう」 『くそっ、サッサと食料の補充を要求しやがれ!』と、外壁の上で雷電がぼやいていると、外壁の下で何かが動いた気配を感じた。次の瞬間、雷電めがけて外壁上に軽々とジャンプして来たのはファズだった。雷電は咄嗟にファズをかわして後ろに下がった。 「!?」  外壁上に上がったファズは驚く雷電をよそに低く唸り声をあげている。 「な、なんだテメエは?」  こいつ……雷電が驚くのも無理はなかった。自分以外のアンドロイド犬を目にするのはコルトとビショップ以外ではあの民生党爆破事件の時に導入されていた三体以来なのだ。  ファズは外壁上という脚元が狭く不安定な場所でも意に介さず、雷電に突っ込んで来た。雷電はたまらず外壁上から地上に飛び降りたが、ファズもその後に続いた。得体の知れないアンドロイドを振り切ろうとした雷電だが、ファズと反対側から挟みうちする形で立っていたのはラグネルとタイロンだった。 「おっと、逃げるなよ同類。中国の紛争時に革命軍側にいた白い狼犬ってのはあんたか?」
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