第15話【侵入口】

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第15話【侵入口】

 雷電はファズの首を咥えたまま勢いラグネルとタイロンに向けてファズを投げ飛ばした。二体の前で転がるファズを見たラグネルとタイロンはお互いに顔を見合わせる。 「なかなかやるな、白いの。よし、ファズの馬鹿のついでだ、次はオレが相手をしてやる」  タイロンが舌なめずりをしながら一歩前へ踏み出したところでラグネルが止めに入った。 「やめておけタイロン、今はやり合ってる場合じゃない。それより大佐に引き合わせるのが先だ」  ラグネルの言葉に舌打ちするタイロン。渋々諦めて歩を止めた。二体ともファズが雷電に仕掛け、雷電がいとも容易くファズをかわして形勢逆転した様子を見て、雷電の力量が予想を越えていた事は微かに認めた。 「ファズ、おまえは罰としてここの見張りだ。うろうろして人間共に見つかるんじゃないぞ!」  ラグネルがそう言うと、ファズは雷電の後ろを歩いていたが歩を止めた。 「……わかりました、了解です……」  雷電に挑んでいった時の血気盛んな様子は消え、すっかり消沈した風のファズ。雷電の強さを自分の身で感じたファズは雷電と公安局の二体がS型に昇格したばかりの自分とはどのくらいの力量差があるかを思い知らされたのだ。ショックは当然だった。  鉄条網が破られ、穴が開いている場所は地下で繋がっている発電所の地下用水路だった。タイロンは先にサッサと穴に入って行く。ラグネルは雷電の方を見て「心配するな、廃炉とはいえ、まだ処理水は流していない。まあ、中にはまだ汚染水がたんまり溜まっているだろうがな」と、雷電に伝えた。雷電はその言葉の意味が理解出来なかった。処理水? 汚染水? それが何を意味するのか? 雷電は原子力発電所そのものの知識をまだ知らない。
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