第17話【対面】

1/1
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ

第17話【対面】

 暗い地下用水路をおそらく100メートルは辿っただろうか、進んだ先に灯りが見えて来た。水路はそこからさらに奥へと続き道が分岐している。頭上からの灯りに照らされ分岐した道もハッキリと見えた。5メートル近い鉄の梯子を手脚を使い起用に登って行くタイロン。その様子を見上げている雷電にラグネルが言った。 「先に行きなよ、客人」と、皮肉な口調で言うラグネルはニヤニヤと笑みを浮かべている。雷電は上を見上げた。既に地上へ登りきったタイロンが上から覗き込んでいるのが見えた。雷電は構わず梯子を登り始めた。  そこはロッカーがずらりと並べられておりシャワーも完備されている職員たちの更衣室だった。一箇所ある入口のドアは開放されている。雷電の後から登って来たラグネルが部屋に入ったところでタイロンが口を開いた。 「まさかここまで来て怖気づいてるわけじゃねえよな?」と、含み笑いを浮かべているタイロン。雷電は無視をしていた。ただの更衣室なのだが、雷電はこの建物を覆っている危険で不気味な雰囲気を微粒子規模で察知した。外から感じていたのと実際建物に入った感じでは圧倒的に違う、「なんだ、この感覚は?」と、雷電は思った。  ラグネルとタイロンが「こっちだ」と開いたドアから廊下に出て行く。雷電はそれに続いた。  廊下を出た先の突き当りは左右に通路が分かれており、先を歩く二体は右へ曲がった。雷電は左側の通路に目を向けた。やはり突き当りで左右に分かれている。迷路のようになっている通路、脚に伝わる冷たい廊下の感覚……あの研究施設がそうだった。似ている、だが、醸し出しているこの危険で妙な雰囲気は圧倒的にレベルが違う。雷電はそう思った。  ラグネルとタイロンの後に付いて行くと次第に通路の両壁にアナログ計器類のメーターが目立ち始める。古いのだろうか、メーターの針はどれも動いている様子はない。と、一面がガラス張りの部屋が雷電の視界に飛び込んで来た。そこはアナログ的な世界とはまた違っていた。  遠目から見ても中にある機器類はどれも緑色をしたデジタル数字が羅列しているし、何を映し出しているのか大小のモニターが部屋中に付いている。その部屋の隅にはひとかたまりになって床に座り込んだ作業着姿の人間が10数人はいた。皆、脅えた表情で疲労した顔をしている。部屋に入るとラグネルが口を開いた。 「大佐、連れて来ました!」  ラグネルの言葉に振り返ったバイラスとカイザー。二体が雷電に視線をあわせる。雷電は二体の視線から目を逸らさず逆に睨み返した。こいつらが奴らより上にいる二体か? なるほど、風格がまったく違う……、そう雷電は感じた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!