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「アタルの学校、青森大会は明日が決勝だから、今日は軽い練習だったんだってさあ。さっすが。余裕だねえ」
アタルからの返信の要約を、曽我部は俺にそう伝える。嬉しそうに画面をこちらに向けながら、俺の席の前まで来てニコリと笑った。
「青森は……降ってないんだな」
突っ伏したままそう言って首だけ前を向くと、眼前のスマートフォンの向こうに曽我部のスカートの襞が見えた。俺の机の角が襞の凹に埋まっていて、俺は画面を見ずにバサっと再び顔を伏せる。
「遠いもん。天気も違うよねえ、九州と東北は。それに、あっちはもうすぐ雪も降るみたい。端と端みたいなもんだからねえ。ほら、アタルも "頑張る" って言ってるからさ。笠鷺くんも元気出してよお」
甘味を増した語尾は、俺に苦味も連れて来る。俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でまわしてから、曽我部が目の前の席に窓の方を向いて腰かけた。俺も首だけ捻り、同じようにその方向を見る。
俺は、水たまりのできたグラウンドを。
曽我部は、それよりももっとずっと先の東の空を。
「アタルは、勝つよね明日。約束だもんね」
「……ああ。きっと」
ラストチャンス。最後なんだ。
でも曽我部、俺達の決勝戦は二日後だぞ、と心の中だけで言った。
こんなに近くにいるのに、曽我部にとって一番大事なことはアタルなんだと、痛いほど伝わっていた。
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