2. 六歳   笠鷺 翔守

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  「……笠鷺くんと……君はー、牛島、アタル?」  振り返ると、色黒の痩せた女の子が俺たちを見下ろしていた。薄くなる昼の気配にすぐには分からなかったが、服装のシルエットと独特の語尾でそれが同じクラスの曽我部沙織だと気付く。  彼女は同級生だったが、ある理由でクラスで目立つ方ではなかったし、どちらかと言うと彼女もアタルや俺と同じ『陰』な存在だったと思う。  曽我部は俺達の横にしゃがみ込み、アタルの様子を観察する。  ひとつ長い溜め息。  深呼吸だったのかもしれない。  そして彼女は察知した。  曽我部は、こういう痛みを共有できる。  いつもなら絶対に脱ぐことはない薄手のカーディガンを脱いで、彼女はアタルの肩にそれを優しく掛けた。 「曽我部。俺、アタルを守りたい」 「うん。私も」  曽我部も同じことを考えている。  それが手に取るように分かった。  アタルを抱きかかえて立たせると、二人で彼を間に隠すように両側に立って歩き始めた。  曽我部は、近くの児童養護施設で暮らしていた。  同級生たちもそれを皆知っていて、それを知らないフリのまま深く関わらないようにしていた。普段からカーディガンを着て見せていない曽我部の左腕には、その内側の手首のあたりまで、何本も直線の引かれた濃赤色の瘡蓋(かさぶた)があった。 「アタル、一緒に行こお?」
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