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【1】起点
〜アメリカ バージニア州〜
ノーフォーク国際宇宙科学研究所。
NASA(アメリカ航空宇宙局)、ロスコスモス(ロシア宇宙開発機関)、JAXA(日本宇宙科学研究所)、その他各国が共同で様々な宇宙開発に取り組んでいる。
敷地内に併設したビルには、トーイ・ラブが組織した機密機関、EARTHの本部があった。
「これはこれは、お久しぶりです、エヴァン長官。あなたが率いる様になってから、NASAの情報公開が増え、世界のあらゆる分野に貢献してますね」
「お互い様ですよ、オリバー長官。ラブさんのTERRAコーポレーションと、EARTHの技術力は、研究に大いに役立っております」
NASAとEARTHの長が、笑顔で握手を交わす。
「今日のテーマは月ですか。宇宙を語るに、最も近い存在。子供達も熱心に聞いていますね」
「ええ、講師のシャーロット部長は、月の権威として、世界1だと思います」
ここでは、毎月1回、全世界に応募形式で受講者を募り、15歳以下を対象に、インターネットによる講座を開催していた。
「さて、まずは試しに。どうして月の裏側が見えないか、知っているかな?」
数人いたが、日本が1番に手を挙げた。
「どうぞ答えて」
「月の自転と、地球を回る公転の周期が一緒だからです。地球の自転は1日だけど、月は27日くらいかかります」
「その通り!大人でも、月は自転していないと思ってる人が、たくさんいるんですよ」
モニターに、そのシミュレーション映像が流れ、考え込む子供達。
「あっ、なるほど!」
思わず声が出たオリバー長官。
「それではもう一つ。月の大きさは地球の約4分の1。太陽は地球の約110倍もあるのに、同じくらいの大きさに見えるのは、なぜかな?」
また日本が手を挙げた。
他にはいない。
「早いな〜どうぞ答えて」
「太陽までの距離は、月までの距離の約400倍で、太陽の大きさは月の約400倍だからです」
「おぉ…」
世界から声が聞こえた。
「その通り、大正解です。え〜と、君は…枕崎 流星さん。お父さんは宇宙飛行士なんだね、さすが!」
「シャーロット先生、質問があります」
「えっ?」
いきなりで、驚くシャーロット。
「何だね?」
「月の向きと言うか、角度と言うか…見え方が、以前と違うのは何故ですか?」
モニターには、現在の月が映っていた。
「あぁそれは、月の表面の模様は、国によって見え方が違うからだね。日本ではウサギに見えるんだったかな?」
「そうですけど…違うんです。ヨーロッパではカニ。アメリカでは、横を向いた女の人ですよね…僕の持っている写真と違うんです。実は、時々僕はウサギを見ているんだけど、やっぱり違っているので、不思議に思っていました」
偶然通りかかった、ロスコスモスのスヴェルコフ博士と綾坂が、それを聞いて立ち止まった。
年齢34歳にして、太陽地球工学の権威である。
「綾坂さん、一年前の今日この時間の映像と照合して下さい」
アシスタント兼技術主任の綾坂 朋美。
研究室へ駆けて行く。
「わ…分かった。調べてみるからね、ありがとう。他の皆んなも、気になることがあったら、自由に発言してください。それでは……」
気になりつつも、話を進めるシャーロット。
まさか再び、この枕崎流星の気付きが、地球の危機を知らせる発端になるとは、誰も思いはしなかった。
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