第二話 物語

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また数年がたち、夫婦の娘は年頃になりました。美しく育った彼女には、多くの求婚者が現れます。 只夫婦が娘を引き留めるので、多くの物が諦めました。 同じころ王様の娘も年頃となり、娘は、ある男性を好きになり、結婚をしたいと思うようになります。 ですが、男は、夫婦の娘を好きになり、彼女へ結婚を申し込むのです。 怒り狂った王は、その男の両親を殺そうとし、男まで殺そうとします。 男は両親たちを連れ、彼女のもとを訪れます。 そしてこういいます。 「私と結婚してください、そして一緒に逃げてください」 男は夫婦にも一緒に逃げてほしいと言います、そしてみんなで仲良く暮らしましょうと言ったのでした。 夫婦は娘の愛した男の家族とともに、姿を消したのです。 王の娘はそれでもいい縁があり、違う男と結婚しました。 ですが、娘は王様の手の届かない遠い地へと嫁いで行ってしまったのです。 息子を亡くし、娘も遠いところへ行ってしまった王。王は悪いのは全てあの夫婦だと思うようになっていくのです。 その頃、王のそばで、おかしなことが起き始めました。 それはとても些細な事でした。 庭職人が最初それを見つけました。小さな目玉のようなものが地面からこっちを見たのです、気持ち悪いと思った庭職人はそれを踏みつけました。 それと同じころ、王様は転んで腕をすりむきました。 次の日も見つけると踏みつけました。 王様は、落としたものを拾おうとして頭をぶつけました。 その次の日も、同時刻に、王様は足の指を机の角にぶつけ痛い思いをしたのです。 あまりにも毎日起きることに、彼はイラついていきます。 ちょどその頃、妹の結婚を聞きつけた兄が街へ戻ってきました、ですが彼は家族がいなくなったことを知りませんでした。 彼は、王宮の城壁の外である物を見つけました。 それは、ただの草の根っこのようでした。 「お師匠様どうなされましたか?」 彼には幼い弟子が出来ていました。 彼はこう答えました。 弟子よ、よく見ておれ。 その根をなでようと手を伸ばすと。 シュルリ。と音をたて、彼の腕に絡まったのです。 「お師匠様!」 慌てる出ない。 水を。 はい。 差し出した水を腕にかけると、根は怖がるように、腕から離れ、土の中へと入って行ってしまったのです。 彼は、高い塀を見上げこう言いました。 弟子よ、いい物を見せよう。と。 彼は、王宮の門兵に、こんな植物が生えていないか、庭職人に尋ねてほしいといいました。 目玉の付いた奇妙な葉っぱだそうです。 変な男だなという兵士は、それがあるのならなんだと言いました。 「災いの種でございます、育つと始めは草に、それがだんだん木になって参ります、そうなると、ここに住んでおられるお方は、気が狂い、皆、死んでしまいます、早く、何とかせねば」 ですが兵士は、帰れ帰れと追い出してしまいます。兵士はそれを王様に伝えることはありませんでした。 二人は、そのまま、家族のもとへ帰ります。 お師匠様、見せた良かったのはその植物ですか? そうだと言いました。 植物は太陽と水が大好きです。なのに、あの植物は水を怖がります。 それもきれいな水であればあるほど逃げるのです。 おかしいだろう?と師匠は弟子に言いました。 災いの種が、城の中にハビコミ、暮らしている人たちを狂わせている、怖いですね? そう、人の心とは、押し付けられたものに逆らえなくなると、臆病になっていくのだ。結局は、押さえつけたものに帰ってくる事になるのにな。 さて、家へ向かっている途中、近所の人に出会い、彼は家族の話を聞きました。 久しぶりにあった息子は立派な青年になっていました。 近所の人たちは、彼の家を大事に使わせてもらっていると告げるのです。 息子は懐かしい家に入りました。 がらんとした家にはもう誰もいないことがうかがえました。 息子は、妹の部屋へ行くと懐かしい思い出を手繰り寄せました。 そう言えば、大事な物を隠しておく場所があったなと、彼は、そこを覗き込みました。 そこには、手紙と、水を出していた石が置いてあったのです。 大好きなお兄様へ、と書かれた手紙は妹の大事な人が王様に殺されそうになり二つの家族は違う土地へ逃げたことを知りました。 そして石からの水も止まったことが書かれてあったのです。 息子は、近所の人に今まで世話になったことを言いました。 そしてこう言い残し彼は去って行きました。 「どうか、ここから逃げてください」 何故だと彼に聞きました。 すると彼は、手にした石を見せ、もう水が出なくなったことを話しました。 息子が去った後、その話は、人づてに広がって行きました。 数日後、あの兵士は庭職人が何かを足で踏みつけているのを目にします。 それはあの男が言っていた目玉の付いた葉っぱでした。 慌てた兵士は、あの男が何者だったのかを訪ねて歩きました。 すると彼は魔導師で、あの夫婦の息子だという事を知るのです。 兵士は日に日に増える目玉の化け物に恐れおののきますがそれを話すことはできませんでした。なぜかというと、あの夫婦の話をしただけで、王様は話をしたものを殺してしまっていたからでした。
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