第二十話 迷宮島の名物

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「きれい」と海を見る女性。 「すみません、外でもいいんですか?」と聞く男性。 「どうぞ、好きな所におかけください」 さて、店も忙しくなってきたぞ。 今日、学校は休み、ただ保育園は開けてもらっている、あまりに小さな子は預けているんだ。 うちの店の中でも子供たちは結構働いているからね。 「安いよ、安いよ!」 「サー、大市だ、半年に一回の安売りだよ、買った、かった!」 なんて声も遠くから聞こえている。 「すまぬが、かけうどんを一つ」 「かけ一丁です」 「はいどうぞ、薬味はそちらにございます、ご自由にお使いください」 「はー、疲れた、焼き魚定食を頼むよ」 「はい、おひとつですか?」 「うん」 「ではこれをお持ちください、お茶の入れ物を取られましたら、そちらで受け取ってください」 「へー、板の上に自分で取るのかい、いいね」 今日は知らない土地から来る人もいるので案内係を置いている。 「すまぬ、ここにあるのは好きなだけと言われたのだが、どれを乗せてもよいのか?」 「どうぞ、これはネギこっちはおろし大根と言って辛いので少しの方がいいです、これは天かす、スプーンに山盛りに何杯入れてもいいですよ、スープが足りないなと思うのでしたら、このやかんに入っていますからたしてください、これは七味、唐辛子というからい物のほかに七つの味と風味が楽しめます、一振りで良いですからね」 「ほー、すまぬ、やってみるよ」 「天丼セットください!」と元気な声の女の子。 「はい、これをもって一番奥ね」 「はーい」 「師匠、天丼セットください」 「オウ、ユン、今日は遅い飯だな」 「大市だもん、兄ちゃんと交代」 「そうか、はい、みそ汁と天丼、こぼすなよ」 「はーい」 「ユン―こっち」 「メリー、ありがと!」 俺はその様子を見て微笑んでいた。 子供たちは大きくたくましくなった。 店は従業員も増えたし、今充実してる。 そして大市は近隣の小国からも買い物に来てくれる。 今、島はアゲアゲだぜ。 「師匠、プリンできてる?」 「おう、その箱だ」 箱のふたを開け確認しているモエ。 「モエ早い」 「これ、できてる」 「わかったって、師匠、これだけ?」 「ああ、今まだ作ってる」 「よかった」 「足りないのはないか?」 「うん、まだ平気」 「重いぞ、やけどするなよ」 大丈夫、気を付けてるから。 モエ達はスイーツ店を隣でしている。 大人もちゃんといるぞ、さすがに卵の殻が足りなくなり、陶器職人に頼んで似たような素焼きの入れ物を作ってもらったんだ。 今じゃ、お土産にって小さな卵形の入れ物は売れている。 それだけじゃない、蛸壺のようなものや、茶碗、どんぶりまで、この島では作れなくて向こう側の島で作って、ここから通うようになってきた。
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