第二十一話 目玉の木

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そして大市が終わった二日後の朝、その鐘は島に鳴り響いたのだった。 二番の鐘。 ジル、リル、モエ、子供たちを頼む! 俺たちは支度をして外へ飛び出した。 海岸へ!という声がしていた。 俺たちは、海へ向かった。 それを見て俺たちは言葉を失った。 対岸に並ぶダークツリー。 それも七本だ。 目玉を揺らし下をのぞいたり、どこからか降りようとしているのがうかがえる。 「焼けなかったのか?」 どうも知恵がついたのか、焼いている間身を隠すのを覚えたのではないだろうかというのだ。 大市の時は二本だけだったという。 陶器職人たちは? 大市の日から向こうへいっていないそうだ。 教会のものたちが来て、やはり、ここは地続きだから、人がいなくなっても精気は吸い上げているのではないかというのだ。 赤い色はしてはいないが、点滅しているのに気が付いたというのだ。 くそっ、どうすれば。 まずは火を絶やさないようにしなければという。 それもそうだが。 その時だ、足元がぐらりと動いた。 地震だ。ここは火山があるから、地震は多い。 「火山をうまく使えればなー」 「前話していた、魔石で誘導するのはできませんか?」 魔石があればの話だ。 そうだった。 …ン?あるかも。 「志村さーんどこ行くんですか?」 「ロードだ。案外あるかもしれない」 洲はまだ水が満ちていない、俺はザバザバと水の中を走って行った。 水の中を見る。赤い色の宝石がないか。 「あ」 すくってみる。 あった、どす黒い宝石だ。 子供達も知恵がつき、これには手を出さなくなっていたというところだ、集めなきゃいけないな。 俺たちは三年の間、何もしていなかったわけではない。 火山が噴火して火山灰が流れて降ってきたことがあった。 でも案外落ち着いて行動ができたのは、佐々木君の智慧があったからだ。 そして、もしも溶岩が流れてきたら、それを止めるための道を作った、これでどうなるかはわからないが、過去に流れ出た形跡はあったんだ。 町の方へ流れたのを海へ流れるようにする石垣を作ったんだ。 あの石垣の外側を使えないだろうか? でも町へ来たら? 魔石で誘導する。 師の称号を持ったものはあの後もこの島へと集まってきていた。 本当は、個人情報だからな、聞きだすことはできない。 だがそれは、大師教が、調べてわかったこと。 「大が付いていないとダメという事か?」 魔法量が違うそうだ。 それともう一つ。 なんだ? 大市の後で、今だ、迷宮の力が戻り切っていないのではないかというのだ。 そうだ、それまでは見なかったのが急に現れ始めた。 ではほっといたらいなくなるのか? それはないかもしれないなというのは、冒険ギルドのギルド長だ。 やはり、ロードに集まっている魔石ですか? たぶんな。 それに見ろ、あいつらを。 俺は見えない目を凝らしていた。 何をしているんだ? 体を振って目玉を落とし、仲間同士でつぶし魔石を取っているというのだ。 「のろしが上がりました」 「向こう側に回ったか、こっちも除草剤と火を投げ込むぞ」 あの、東側の漁村からは人が消えた。 キャプテンはあの後、定期的にあの辺を回り、地形や人の観察を続けてくれていた。 焼けた船を直すこともしなければ、新しい物もないというのを不思議に思っていた。 去年、俺たちは上陸し、上を目指した。 「すごい、よくここまで掘り上げた」 「感心するよ、これなら、人も馬車も楽に行ける」 ぐるぐると周りながら上を目指す。 そして、そこで見たダークツリーは、除草剤と油で焼かれ息絶えた。 「魔導師様来てくれ」 残ったのは…。 「種か」 「でかいな」 ベルベットストーンのもっとどす黒いこぶし大の楕円形の宝石だった。 中にまん丸いものがある、核かな?そこから芽が出るらしい。 俺は、それを杖で粉々にした。 粉になった種は風で吹き飛んでいった。 そのトンネルのあちこちに薪を置いてある。それを上まで運び、燃やすんだ。 海岸から火を放し向こう側でも火をつけ、狭めていくことで焼き払おうという作戦だ。 もちろん除草剤も大量に持って行ってある。 あの、西側に俺たちが作ったスロープは、あの王様もどきが来た後崩してしまった、東側のあのトンネルが使えるようになったからだ。 さすがにあの目玉は大きすぎてトンネルをくぐることはできなかったと見える。 小舟から弓を構える人たち。 それが一斉に上へと向かって行った。 しばらくすると、叫び声のような声が聞こえ始めた。 除草剤がかかったのだ。 海岸から内陸へ走る目玉たち。 そこへ今度は火のついた矢が向かって行く。 悶々と真っ黒い煙が登っていく。 向こう側からは油がまかれているはずだ。 目玉の大木が、足を滑らせ落ちてきた。 つかさず、下からも油をかける、海に落ちて、火が消えないようにするのだ。 俺たちはその行方を見守っているしかない。 そしてやっと火が消えたのは次の日になってからだった。 七個の種が目の前に並んだ。 俺はそれを叩き潰していく、もう、魔王の種がはびこらない世界なることを祈って。
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