第二十二話 木の行進

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第二十二話 木の行進

「オーライ、オーライ、ストーップ!下ろしてくれ!」 「いくぞ!」 「おお、静かにな!」 まるで向こうの世界のような大規模な工事が始まった。 村民だけではなく、あちこちの島からも手伝いに来てくれた。 みんなの期待は、向こう側の大地に何とか人が住めれば、他の島がだいぶ余裕が出来るという事だ。 みんなの期待がのしかかる。 「すごいな」 「父さん、倒れたって!」 「はー、いくらHPの回復が早いと言っても無茶しすぎじゃねえか?おーい、誰か志村を連れてきてくれ、首に縄付けでも来いって引っ張ってきてくれ!」 何度も失敗を重ね、何とか、橋の完成が見えてきた、嵐にも絶えた。 案外、民は図太さも持っている、気がつくと橋の支えにちゃっかり人が住み始めていたのには驚いた。皆が一致団結したその橋の完成はあともう少し。 後はダークツリーが、渡ってくれるだけではなく、最後、あの、火山の火口へ落ちてくれないと意味がないのだ。 それと、金のお面の意味が分かったのだ。 ダークツリーをじかに見ないため、見たとしても目線を合わせないための物だというのがわかったんだ。 ならば、こちらも、目には目をという事で、長いお面を作り、目をいっぱい書きこんだものを作ったんだ。 これが使い物になるかはわからないが、ないよりはいいと思う。 俺と佐々木は、キリクさんと父親とで、火山のそばまで来ていた。 毒ガスは硫黄臭のするなか、何が含まれているかわからないから、マスクをつけた、凄い、専用の物があるんだ。 「ここを上って来てくれればいいが」 「崩してもだめか?」 たかだか何メートルか崩せてもそこを来るまでの間にどれだけの魔石を用意できるのか? 「用意しなくても一本だけでもたおせたらどうだ?」 「そうだな、その分の目玉を他の物が食いに来るんじゃないのか?」 目からうろこ。そうです、何で思いつかなかったんだろ、あいつらが石を持っているんだ、それを生かせばいいじゃないか。 俺たちは何度も何度も協議を重ねた。そして、あいつらが姿を見せ始めたんだ。 ダークツリーの歩くスピードはそんなに速いわけではない。まだ赤ちゃんのハイハイの方が早いかもしれない。 相当ゆっくりだ、重さに耐えられるだけの頑丈な物は作ったつもりだ。 出来上がったのを見た時、万里の頂上だなと佐々木君と言ったんだもの。 春分の日が近付いてきた。 もう魔法は俺たちには使えない。 あとは、みんなの力だけが頼りだ。 一本目の木が、橋へ登り始めた。 目玉を下に落としかねないので、回収隊には笠を作った。 もちろん、手には除草剤の入ったスプレーを持って、片手には、木で作ったトングを持たせた。 魔石が取れないのにイラつき体を震わせ自分の目玉を落とし、つぶれた上を歩きはじめた。 根を張ることもできないので歩くしかない。 次のが橋に登るたび、俺たちはよっしゃと言いながらその様子を見ていたのだった。 その日、クリンはリリアと子供たちを連れ花と供物を持ってあの洞穴へとやってきた。 兵士が門を開け、中へ入って行く。 「真っ暗-」 「ワー」声が遠くへ引き込まれるのをたしんでいる。 リリアが松ぼっくりに火をつけた。 「ワー、明るいね」 「さあ、行きましょ」 「ほら、手をつなげ」 四人は、奥へと向かって行きました。 「ママ、あそこに誰かいるよ?」 え? リリアはどこだと警戒している。 「門の前です、あの子は?精霊じゃないかしら」 リリアだけには見えないようで、子供たちにからかわれたようです。 クリンはどうしたのと声をかけました。 彼女は、上を指さし、さみしそうです。 「ごめんなさいね、今上を、恐ろしい物が山へ向かっているの、だから子供たちは外へ出ないように言ってあったのよ」 「すごく怖いんだよ」 「だからね、いいって言うまでお外に出られないの」 小石を蹴って、つまんないといった具合です。 「そうだ、少し遊びに行きましょうか?」 するとその子はパーッと笑顔になった顔を上げました。 祭壇の準備をしている間、リリアが子供たちを見ています。 何事もなく、供物をあげ、魔石を置き、子供たちと上の原っぱへ向かいました。 「見て、ほら、凄いでしょ?」 「あんまり見ちゃだめよ」 「どうして?」 「あいつに操られて、ふらふら向こうへ行ってしまったら、アイツに食べられちゃうのよ」 「やだー」 するとその子は“やな奴”と呟いたそうです。 しばらくそこであそんだ子供たち。 そして、リリアとクリンに抱かれ眠ってしまいました。 「さあ、帰りましょうか?」 と彼女にクリンが手を差し伸べた時です。 『あいつらをどうする』 クリンは、火山の火口へ投げ入れるつもりですと話したそうです。 「早く、子供たちが外で思い切り遊べるように、私の夫が考えました、そして島中の人が早い安穏を願ってあの橋を作ったのです」 『そうか』 と彼女は言いながら、クリンの手を握り、橋の上をゆっくり進む、ダークツリーの行進を見ていたそうです。
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