第二十二話 木の行進

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橋の下は大騒ぎです、落ちてきた目玉を拾い集め、魔石はすべて回収、それは山へと運ばれていきます。 一つも見落としがないように、みんな必死です。 そして山の上では、徐々に近づいてくるのをうまく火山へと向かうようにと祈るものたち。 ここまでやって来たのに、いまさらできなかったということは許されません。 夜、かがり火がたかれ、島は明るくなりました。その明かりは一番近い島から見えるほどだったと言います。 そして魔法が使えない日がやってこようとしています。 「十二時ですね」 「ああ、何が起きても不思議じゃないからな、しっかり頼むぜ騎師殿」 「はい!」 「0時の鐘ですね」 「ああ、此れから一時間ごとに鐘がなる、無事に済めばいいが」 「神様、どうかみんなをお救いください」 子供たちはみな集められ、リリアとクリンが中心になり、教会は二十歳以下の子供たちで守られます。 体の不自由なもの、老人で体が動けないものも一緒です。 子供らはこの先未来のある物として、大人たちが何をしてきたか後世に言い伝え残していく使命があるのです。 老人たちは今、何が起きているのか話を聞かせえています。 怖い事は、それに立ち向かう勇気がなければいけない。今この島の大人たち、そして島のすべてのものが勇者なのだと、だからみなゆうことを聞きます。 自分がこの島の勇者の一員だという誇りを胸に。 夜は更けていきます。 火山では、木より断然早い我々が、落ちてきた目玉から取り出した魔石を火口へと投げ入れていきます。 こぼれても、それはあいつらが取り込んでくれるでしょう。 「火を絶やすな!」 「木は足りてるか?」 「十分です」 「そっちは何か足りない物はあるか?」 大丈夫ですの声です。 出来るだけ、目玉が落ちてこないように羽をつけていますが、まあ落ちてくること、それを回収するのは大変です。 「もう、このねばねばどうにかならないのかよ!」 「かっかするなよ、木が落ちてくるぞ」 「怖いこと言うなよな」 「ははは、頑張ろう、俺たちの住処のためだ」 「そうだな、とりゃ、くたばれ!」 木の行進はまだ半分です。 「やっと半分だ、この分じゃ先頭は今日の昼だな」 「一番力が奪われる時間ですね」 「ああ、気を抜けないな、とにかく交代だ、もう、夜が空ける」 ですね。 三交代制にしていたが、緊張やもろもろで眠れない、一度山へ、背負子を背負い魔石を運んだが、それだけでくたくた、俺たちは、三時間ほど眠らせてもらうことにした。 「王様、見えておられますか?」 「ああ、すごいな、書記官よ、しっかり目にしたものを書き残してくれ、そして、あのものたちがしていることをこの世界に広め残さなくては」 「キャプテン、いいんですかい?」 「ああ、志村はこの世界の責任だと言ったんだ、残った王たちに見せつけてやれってな、俺たちが生まれ育った島だ、ここだけでも残さねえと…」 「そうですね…」 海の上の見物人は、この世界に残った王族の方々です。みたいという方を招待しました。 それだけではありません、これは、これから未来を変える為のたった一歩の事で、この流れを変えるのはこの世界の頂点に立つ人たちの心の問題なのです。 教会の人たちがそれを話していきます。俺たちが、この世界へ召喚された意味とともに。 橋の上を一列になって進むダークツリーをただ遠くから見ているのでした。 「五、六!六回なったよ!」 「よし、朝飯の支度だ、みんな!頑張って作るぞ!」 おう! 子供たちはどうしてもやると言ってきかなかったことが始まりました。 がんばっている大人たちのためにおにぎりを作るんだそうです。 「あちちだよ、きおつけて」 「ご飯が炊けたよ」 「いい匂い、でもなんで栗なの?」 ジルがこう言いました。 「勝ち栗と言って縁起がいいんだって、絶対に勝って勝ち時を上げる時に食べるんだって言ってた」 「勝ち時?」 「勝ったらね、エイ、エイ、オーって手を上げるんだって、みんなで御祝いなんだって」 へえ。 「漬物もいいよ」 「これにね、お肉と栗、おにぎりを二つ、お漬物と卵焼きを乗せていくんだよ」 「包んだらかごに入れて、運ぶ係は、数を確認して持って行ってくれ」 「お茶、水が足りてるか、確認してきてね」 「婆さんや、ここへ来てよかったな」 「はい、こんなワクワクするのは久しぶりです」 「くそ‼ケガさえしてなきゃな」 「それでも男の人がいてくれるだけで助かってます、それもお願いしますね」 「そうか、よし、頑張るか」 「食事です!」 「すまん、ジル」 「ありがとう」 「まだまだですね」 「ああ、気が抜けないがな」 「師匠は寝ましたか?」 見てくれと指さした先。 寝袋に入って眠る人たち、そこには師匠の姿もありました。 「眠れることはいいことさ」 「ですね、足りない物はありますか?水はある?」 「大丈夫だ」 中を見て驚く人たち。栗ご飯のおにぎりです。お肉は精が出ると喜んでいます。 「成功してくれ」 と橋を見るジルは、声変りもして、大人びてきました。 「ああそうだな」
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