第二十二話 木の行進

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そして十二時の鐘。 まだか、まだかとその瞬間を皆が待っています。 俺たちは山を登り、火口の反対側で、その様子を見ていました。 「そろそろ止める合図をします」 「そうだな」 魔石を持ってくる人達を止める合図です。 これからは危険になるので、三キロ先の山の入口へ、魔石が置かれます、ここなら、アイツらが道を外しても、置いてきた魔石が誘導してくれます。 午後一時。 「来ました!」 「来たぞー!」 先頭が向かってきます。 その瞬間を俺たちはじっと見ていました。 こぼれた魔石の上をゆっくり火口へ上ってくる木、そして先頭の木は、体の重みで、溶岩の中へ真っ逆さまに落ちていきました。 「よし!」 「やった」 「合図します!」 「頼みます!」 ヒュー、パン! 「上がった!」 「上がった、合図だ!」 鐘の連打と、カンカンカンと三回なり、また連打その繰り返しがなります。 「先頭が落ちた」 その瞬間、わっと歓声が起きました。 「まだまだこれからだよ」 「みんな頑張ってね」 「はーい!」 「落ちたか」 「だがまだ来る、まだ気が抜けねえ」 「よし、もう少しで交代だ」 「ああ、頑張ろう」 そして次の日、途切れることなくくるダークツリー。 対岸はだいぶ減ってきたという報告が上がってきました。 まだ油断はできません、すべてのダークツリーがこっちへ向かい、すべてが島から無くなっているとは限らないからです。 みんな疲れ切っています。限界が近づいてきています。 その日、三日行われるはずだった大市の最終日。 クリンはジルと共に、洞穴へと入っていきました。 「祭壇はどうする?」 「片づける、あれ?」 「どうした?あれ、あの子?」 クリンは、精霊の側へ来ました。 「こんにちは?よく寝た?」 彼女はこくんと首を動かしました。 クリンとジルを見て、周りを見ています。 「ああ、あのね、まだあいつらがいるの、だから今日は誰も連れこられないの」 なぁんだと言った感じです。 ジルに向かってお腹を叩きました。 「ごめんな、祭りも中止なんだ」 えーっといった感じです。 でも、あの木の退治が終わったらできないか話してみようかというとものすごく喜んでいたそうです。 「魔法の力が出ないから、まだかかるかもな」 そういったジルの服をその子が引っ張りました。 「ん?」 「外へ行ってみたいの?」 うん、うんという子。 じゃあここを片付けてからでもいい? その子はうんと言いました。 「じゃあこれをどうぞ」 お菓子の入った包み紙です、彼女は嬉しそうに受け取り食べ始めました。 一方家で留守番のわが子供たち。 「誰?」 「マイ、どうかした?」 「カズ、何か聞こえない?」 なに? 「こっちだって」 「こっち?」 そこはパパの部屋。 「だめだよー、起こられるー」 「でも、おいでって」 ノブに手をかけたマイ。 「だめだよー」 「にいちゃ、ねえちゃ、なにしてる?」 「びっくりした」 「サーヤ、しー、ね」と指を口の上に置いた。 ドアを開けると何かが光っている。 いすに這い上がって机のうえにあるガラス瓶を手にした。 「なんだろう?」 「怒られるよー」 「キラキラ」 おーい、カズどこだ! 「母様だ」 「どうしよう」 「カズ」 「なに?」 「これもって」 えー! 落とさないでね。 マイはするすると降りて、カズに渡したビンを手にして部屋を出ます。 「ドア閉めてね」 もう!行こうサーヤ。 「母サマー!」 「おや、マイ、どうした」 「これ見て」 「・・・おい、これは」 手にしているのは、白熊を退治した跡に拾った魔石です。 「おいでって言うの」 「おいで?」 「うん、ママのところにおいでって」 リリアはサルーに子供を頼み、マイをつれ、クリンの所ヘ向かいました。 綺麗に片づけ、クリンはその子の手を取り、上の原っぱへ出てきました。 「すごいな」 「ええ、まだいるのかと思うとぞっとするわ」 するとその子は、クリンの手を引っ張りました。 「何?」 手を出します。 ん? 指さしたのはクリンの腰。 「ああ、あなたがくれた玉ね」 袋を外し、彼女へ渡しました。 その子は、袋の中を見るとにっと笑い、両手を空に向かってあげたのです。 風が吹きました。 「姉ちゃん」 「大丈夫」 「みて、空」 え? 雲が集まりだします。 「なんだ」 どうした? 「空が、急に雲が出始めた」 嘘だろ!ヤバイ、雨なんか降りそうもなかったのに。 「どうしたんですか?」 「やばい、雨が降るかもしれない」 「うそでしょ!」 そしてこっちもです。 「ダメだ、雨は降らせるな!」 「やめて、雨は降らせないで!」 クリンとジルは、彼女にお願いします。 彼女は笑って空を見上げています。 リリアもそれを見て走り出した。 「クリーンー!」 「ママー」 「リリアさん?マイ?」 彼女の手から、ビー玉が飛び出し、くるくる輪になりながら空へ向かって行きます。 そして、彼女は、それを、対岸の方へと動かしていくではありませんか。 何する気だろう? わからない。 すると彼女はこういったんだそうです。 「私は遊びたいの!邪魔するな!」 そういうと、白い球は、向こうの島へ飛んでいったんだそうです。 その時です。 ドッガーン、バリバリバリ! キャー! ウワーッ! ガッシャーン! 「あ」 「あー!」 驚いて落としたガラス瓶が割れてしまいました。
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