おうさま、おうさま。

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『身近にいる“王様”を見つけて、その人に呼び掛けるの。“貴方は王様ですか?”って。すると、王様がどんな性格の人であっても必ず“はい”って正直に教えてくれるのね。で、次にその王様に“私は王様になりたいです。代わってください”と言う。すると、王様はお願い事を叶えてくれる。そうして今度はあなたが次の王様になれるってわけ』  最初の王様が、どのようにして発生したかはわからない。室っちが気づいた時にはもう、何人も新しい王様に代替わりした後だったそうだ。  気づいてからは、彼女は趣味で“歴代の王様の名前”をノートにメモし続けているのだという。  今の王様が誰なのか、不思議と彼女にはわかるのだそうだ。というか。このおまじないを知った人間は、王様が誰なのか直感で分かるようになるという。 『次の王様になったら、あとは少しだけ待つの。ほどなくして、願いを叶えて欲しい人がまた貴方の前に現れて“貴方は王様ですか?”って尋ねてくるから……あとは最初と同じ。その人の願いを貴方が叶えたら、王様の役割は次の人に交代になるのね』  叶えて貰えるお願いに、制限はない。  ただし、いくつか注意点がある。一つ目は、王様に叶えてもらったお願い以上の事を、あなたは次の人相手に叶えてあげなければいけなくなる。次の人があまりにも無茶なお願いを行ってきたら拒否することもできなくはないが、自分がお願いを叶えてもらってからどんなに長くても二年以内に代替わりしないといけない。でなければ、王様の呪いを浴びて、想像しうる中でも最も残酷な死に方をすることになる。  もう一つ。お願いを叶えてあげる側になった場合、相手の「代わってください」に頷いた時点で契約は成立することにも注意が必要だ。自分の意思で叶えられるレベルのお願いならば、己で行動すればいい。しかし、人の力を超えたお願いが来た場合、王様の意思と能力を問わずあらゆる手段を使って“次の王様になる人”の願いを強制的に叶えることになる。極端な話「大金持ちにして」と言われたら、借金をしてでも相手を大金持ちにしてしまうし、「肝臓ちょうだい」と言われたら突然自分の肝臓が消えてしまったりもするというわけだ。 「け、結構怖いおまじないじゃない?それ。ようは、何でも叶えてくれるでしょ?で、叶えて貰った分は別の誰かのお願いを叶えなければいけない、と」  やや引き攣った顔になる千速ちゃん。その通りではあるのだが、この時の私はそこまでこのおまじないが怖いと思っていなかった。というのも。
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