第三話 王たちのプライド

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第三話 王たちのプライド

「また太ったかな?」 今、師匠はスーツというものを着ている。師匠にとってこれは戦闘服なんだという、そして足元には、革靴という黒い靴を履くんだ。 出会ったとき、裸足で、傷だらけだった足、捨てるという靴を見せてもらったとき、すごい履物だと思ったんだ。 師匠は、革靴を島の革細工職人に頼んで作ってもらった。 元々着ていたスーツもボロボロで、仕立て屋に頼み同じものを作ってもらった。すごい時間がかかって大変だったみたい。 「ジル何突っ立てる、早くしたくしろ」 支度?ああ、エ~と師匠と同じ風呂敷という布の中に入っているってねえちゃんが・・・あ。 「どうした?着せてやろうかー?」 師匠のニタリとした顔。 いいよ自分できれるから。 師匠そっくりの服装、違うのはシャツとネクタイ、サスペンダーでズボンが落ちないようにして、上着はまだ熱いからあとでいい。 そして。 「どうだ、慣れないから痛いか?」 俺は首を振った。 何度か履いたよ、慣れないと足が痛くなるからって、みんなにはおしゃれなものを履いているなって言われたけどさ。おしゃれってわかんないし。 俺の足元にはピカピカ光る黒い靴。 「ジル?」 顔を上げた。 「結んでやる、リボンだけどな、改まった場所だからな」 師匠とこれから王宮へ行くんだ。 キャプテンも着替えるって言ったけどさ。 「よし、できた、行こうか」 「うん、じゃないや、はい」 休む間もなく俺たちはまっすぐ宿屋へ来た。 今日だけ、宿屋、明日からは、違う場所へ移る。 大量の荷物は、どこか預ける場所があるらしく、ルルと船員たちはそっちへ行ってしまった。 きなれない服装、肩が動かない。 「おー?いいの着てるじゃねえか」 キャプテンもいつものかっこうとは違う、風呂に入ってひげも剃ってきたからか若く見える。 「では行きますか?」 「ギルドの二人は?」 「向こうで落ち合います」 師匠は俺のそばに居ればいいからなといっていたけど、俺が城へ行ってもいいのかな? そして俺は初めて王宮の中へ入った。 でっかい建物だな? いっぱい人がいる、師匠たちは胸を張って真ん中を堂々と歩く。 脇へ行き、こそこそ話をする人たちの格好が、なんだか少しおかしい。 女の人はリリアがよく着ている、夜きる薄着の長いものだ、男の人は、俺はよく履く、短いズボンなんだけど、ものすごい膨らんでいて、靴も細くてとがっていて、なんだかちぐはぐ。 まだ俺たちの格好のほうが、すっきりしていてかっこいい。黒だけど、きれいな黒で、師匠の黒い髪にあう、真っ白いシャツに真っ赤なタイ、師匠は青いきれいなネクタイといものだ。 キャプテンも似たようなものだけど、濃い青い色、ササは濃紺といっていた、植物から取った汁で染めた布できれいな色、キャプテンも俺と同じリボンタイをしている。 靴は、茶色、似合っていると俺は思う。俺も二人みたいに着こなしたいな。 「志村オーナー」 その声に顔を上げると商業ギルドのアリさん、彼は、真っ赤なシャツを着て、白い花を胸にさしている。 その隣には、いつもより、少しだけいいものを着ている冒険ギルドのザーブルさんが嫌そうな顔を向けた。 「あれ?教会のほうは?」 「遅れるんですってー、あら―、きれいな色ねー」 「お、ジルもいいのきてるじゃねえか?」 俺は裾を引っ張ってみた。 背中をポンとたたいたのはキャプテン、さあ行くぞと、師匠を先頭に大きなドアを開けてくれた中を入って行ったんだ。 たぶん、真正面の高い場所にいるのが王様と王子様だろう、下の方にずらりと並ぶ女性と子供たち。 その前をずんずん進み、階段の下で立ち止まった。 「よく来た、大魔導士志村、そしてギルドのものたちもよく参った。本日は、隣国の王たちも来ておる、それとわが家族も目通り願いたく呼んだ、軽く挨拶を済ませたら、場所を移し、これからのことを話し合う、まずは、各国王の名を読み上げさせてもらう」 ドンと音がして、わきにいる人が何かを広げ読み始めると、一歩出てお辞儀をしていく男性たち、これが王様たち。そしてこの国の王妃様たちがあいさつをした。 子供たちは無しか。 「では隣にうつりましょう」 すると、数人並んだ子供たちの中から女の子が一歩前に出て、俺を指さした。 「なぜあのようなものが、大魔導士のそばに居る、私は名前を呼ばれもしないのに、父上は何をお考えですか?私の国をあのようなものに託すのですか?」 といったんだ。 「すみません、チア、まったくあなたは、まだ何も知らないのです、下がりなさい、お恥ずかしいところを、どうぞ、かまわずお隣へ」 「行くぞジル、ジル?」 「は、はい」 大きなテーブルに各国の王様たちがずらりと並んだ、俺は師匠の隣についた。 「ジル、メモを出してくれ、それと、王様たちの名前を覚えているだけでいい、席の順に書いてくれるか?」 「うん、あ、はい」 俺は、師匠に作ってもらった、小さな鞄から、メモ用紙と鉛筆というものを出した。 テーブルに広げ、それを書き始める。 師匠も隣で広げかき始めるけど、俺の知らない文字なんだ、師匠の国の文字なんだって。 「すごいな」 「俺は一度聞いただけじゃ覚えられなくて、ジルの記憶力には脱帽です」と隣にいる人に話している。 俺は王様の名前を書いていった。 「では、始めるとしよう、まずは、今のこの島の状況を、一番ひどい北側から、ドレン国王よりお聞かせ願えるか?」 師匠はどれ?と聞いてきたからこの人と指さした、師匠は印をつけ、同じしるしを自分が書いたものにもつけていた。 「穿設ながら、先に、我が国の隣国であるクステーブ国」と話が始まった。 どうも、リシュッテルデ国にダーク―ツリーがいて、その国を囲むように高い壁で覆ったそうだ。民は逃げられるだけにがしたが、今は、王族と貴族が残っていて、どうにもならないという。 食べ物は自国ではもうどうにもできなくなっていて、それでも兵士や奴隷商を使ったが、周りの国がぐるりと外を固めてしまったがために、動けなくなっているそうだ。 「魔物はどうですか?」 「外にまでは出てきておりません」 三重に作り上げた壁の内側には、除草剤の川ができているそうだ。 師匠に言われたとおり、その外側にはきれいな水を流す川ができていて、そこから外には、あの目玉の植物は出ていないそうだ。
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