第九話 目の前に現れた魔物

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どーん!という重い音が背中でしました。 静かです、ドアの向こう側では、みんなが戦っているのに。 こつん、こつん。 カツ、カツ。 二人の足音しか聞こえません。 シムラは明かりですと棒のようなものを受け取った。 ものすごい明るい、シムラはあたりをそれで照らしている。 「止まって、あれを」 目の前には、何かうごめくもの。床をこするような音がしています。 「けっ!いいご身分だぜ、女王とやら、いるんだろ?コンだけえさ食ってリャ、さぞかし腹いっぱいで動けねぇだろうな!」 そこには山になった何かの骨。人骨? ハハハと女の笑い声です。 俺とシムラの明かりが、その声の主を探します。 「声がするけどどこにいるんだろうなー、くせえし、どこに、くせえ肥溜めの中に王がいるんだかな?」 すると志村が真正面の上のほうに明かりを向けました。 「みーつけた」 髪の長い女、でもその下の体はどう見ても蛇のようです。 「よく来た、お前が王か?」 「俺?俺は通りすがりの魔導師」 すると顔だけが落ちてきて俺たちの数メートル前で止まった。 「でっケー蛇」 そういうと女の表情が変わりました。 「空気悪、窓ないの?ないのなら、あけていいよね」 シムラは壁のほうを向くと、杖を持ち、構え、こういいました。 「ウォータージェット!」 勢いよく出た水が、壁に穴を開けました。 外の明かりが部屋に入り込み、部屋の中を照らすとその全貌が見えたのです。 まぶしくて、光から逃げるように動く大蛇。 でも首から上は人間です。 「ねえ、あんたが女王?」 声は返ってきません。 「獣と成り果て、魔物に心を食われた魔獣、名前さえいえなくなったか!」 「グルルルー」 「もはや人間ではないな?」 「グルル。我が名はマグリット、魔導師ごときに我は殺せまい」 「構えろ!」 大きく口を開けると、唇が大きく裂け、その中からは、見たことのない牙の生えた大きな口が噛み付こうと口を開け向かってきた。 「ザーブル!悪霊退散!」 何かを投げつけたものをかぶると苦しそうに逃げるものを切りつけた。 「だめだ、傷つけただけだ」 まだです、チャンスはきます。 「アーあ、すごいな、お前、自分の姿見たことないよな」 そういうと、ミラーといいました。 女に向かい鏡を出すと、手でそれをよけるようにしたのです。 「へー、まだ女なんだなー、暗いよな、ちゃんと見たほうがいい、ライトアップ」 周りがもっと明るくなりました。 ギャーという声と、見るなといっています。 「化け物が何を言う、人を喰らい、魔獣になった姿、恥を知れ!」 又何かを投げると、バシャンと言って砕け水のようなものがかかりました。 ギャー!と苦しそうにします。 「まだ、まだ!」 バシャン。 バシャン。 ドウン! 大きな音ともに、倒れた魔獣に切りかかりました。 「ギャーオー!」 「ウワー」 「ザーブル、そいつの急所は心臓じゃない、心で見ろ、お前には急所が見えるはずダー!」 バシャン。 「はあ、はあ、急所?どこだ、どこだ!」 「王よ、王となりし者よ、私を助けたのなら、この宝をすべてやろう、頼む。お願い、助けて」 女の優しい声が聞こえてきました。 「惑わされるな、目の前にいるのは魔物だ、お前の大事なものを奪った魔物だ!」 バシャン! 頭からかぶった水。 「スッペー!アブねえ、俺は王なんかじゃねえし、なろうとも思わねえ、俺は、冒険者だ!」 わらじがきゅっと音を立てた。 「このやろう、急所を出しやがれ!」 シムラが剣を出し切りつけた。 すると。 「見えた!ここダー!」 ザーブルは、蛇の体を走り、頭めがけ、剣を突きつけようとして、もう一本腰から出した。 「祖父、叔父の仇、マグリット死ねー!」二本の剣を、頭めがけ突き刺した! ギャーという声とともにもがき苦しむ蛇は最後の力で、のた打ち回る。 壁が崩れ、ドアを叩き割り、向こう側にいた者たちが見たものは、ザーブルを振り落とし、とぐろを巻きつける、魔獣の姿。 「ぐわー!」 「ザーブル、これを!」 剣を投げた師匠。 でもその剣は尻尾で振り落とされた。 冒険者たちが走りよっていく。 「マスター受け取って!」 この、この!とみんなで切りつけます。 「最後だ、死ねー!」 ギャーとものすごい声を上げ、蛇は壁から身を外に出したのです。 「ザーブル!」 「ギルド長!」 「マスター!」 みんなが穴から顔を出しました。 「助けてくれ」 壁にぶら下がっていた人を引き上げました。 足元には、ものすごい魔物たちが、蛇に喰らいついているのでした。
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