第一話 水揚げ

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「佐々木、海に行くぞ」 「はい、今日は遅いですね」 丁度いい時間じゃないか?と時計を見ている。 その下にあるカレンダーを見ると、水揚げの文字。 そうだ、今日は牡蠣が上がる日だ。 「バケツですか?」 「まさかリヤカーだろ?」 ですね。用意します、ごちそうさまでした。リル行くぞ。 はい、ごちそうさま、モエ、あと頼む。 「えー学校!」 「じゃあ早くしろ遅刻するぞ!」 「ほら、パパ行ってらっしゃいは?」とサル―。 「や!」 オー、こりゃ、いやいや期に入ったなと言う志村さん。 そうなんですか? 早く行こう、泣かれるぞ。 「じゃあ、後頼む」 「や―!パー、パー」 ほら始まった。 サルーは早く行けと言う腕の中でひっくり返ってる。 行ってらっしゃいというちび達の声に見送られ、俺たちは、岸壁へとやってきた。俺の所は四歳と三歳の女の子と生まれたばかりの男の子。志村さんの所は、四歳の男の子と女の子、ジルもモエもリルも兄弟だ。 すごい活気。下からはものすごい声が上まで聞こえている。リヤカー二台で下へ向かう。 これぞ漁師町と言った賑わいだ。大市も始まるからすごい人だ。 小さな船から降ろされる入れ物は新鮮な魚たち。野菜や果物もある。 これは一番近い、カナップ諸島のケナという島から来る船だ。 「おーい、志村、ササ!」 手を振っている人の船にはまるで岩のような物が山になっている。 「おはようございます、オーいいですね」 「むいてみるか」 「はい、お願いします」 手のひらより大きな岩のような物を取り、そこに金属のへらを入れた。 「二年ものだが、いい出来だ」 プリップリの牡蠣の身が顔を出した。 「うわー」 「でかい」 「リル、食ってみろ、佐々木君も」 志村さんは自分で牡蠣を開け大きく開けた口へ入れた。 「んー」最高! 親指を出しています。 「うまい、みるきー」 「おいしいおっきい!」 一口じゃ無理だと、口いっぱいほおりこむリル。 アタリ貝は腹痛を起こし死ぬ人もたまにいる。日本で売られているのは綺麗な水に入れ殺菌したものだ。 俺たちは水槽を作り、自然にできた牡蠣をもとに養殖に着手。この島ではできないが、できる場所を見つけた。 今回は俺は留守番だがジルにはいい機会だ、リルもいつか連れていこうと思っている。 師匠こんなにどうするんですか? 「焼き牡蠣にするぞ!」 外の焼き肉用の場所でやるんだ。 生は、ここでしか食べれない。最高のものだしな。 「あー、志村、何うまそうなの食ってんだよ!」 見つかった。島の漁師だ。 「売りもんだぞ、鉄二枚!」 「おーい、アタリ貝だ、生は今だけ、味見したいのは、鉄二枚だとよ!」 彼の一声で、うわっと人が集まってきた。 「今だけ、スヌール、悪いけどシートをかぶせてくれ」 「あいよ、待ってな、今最高の食わせちゃる」 並んで並んで。 自分で開けるという人もいるし、開けるのを待っている人もいる。 俺は鞄を開けると、そこに小銭が入っていく。リルはそれを抑えている。 「うめー」 「さすが新鮮だ」 「今日の昼は牡蠣飯と焼きガキだぞ」 ウオーというような歓声だ。 その横で俺は、スコップでリヤカー二台に牡蠣を移している。 ジャッと言う貝の音がなんともいい。 「そろそろ時間だ、腹壊すからここまでな、また三日後来るからよ」 「うまかったー」 「最高だな」 「カー、酒が飲みテー」朝っぱらかよ、あははは。 「後は店にきてくれよな」 オウ、じゃなとみんなが買いものに仕事に戻っていく。 「いくらになった?」 わかりませんよ、後でサル―さんに勘定してもらいます。 鞄のふたを閉めると師匠は、軽くなれと言ってリルにカバンを渡した。 これだけですっと軽くなるんだビックリするぞ。 「ははは、俺は酒が持って帰れればそれでいいし」というスヌールさんも残りを入れ始めた。 「とにかく運んでしまおう、氷出すぞ」 師匠は、アイスというと大きな氷の塊を一番上に乗せシートをかぶせた。 スヌールさんは船を洗ったら店に行くという。
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