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「佐々木、海に行くぞ」
「はい、今日は遅いですね」
丁度いい時間じゃないか?と時計を見ている。
その下にあるカレンダーを見ると、水揚げの文字。
そうだ、今日は牡蠣が上がる日だ。
「バケツですか?」
「まさかリヤカーだろ?」
ですね。用意します、ごちそうさまでした。リル行くぞ。
はい、ごちそうさま、モエ、あと頼む。
「えー学校!」
「じゃあ早くしろ遅刻するぞ!」
「ほら、パパ行ってらっしゃいは?」とサル―。
「や!」
オー、こりゃ、いやいや期に入ったなと言う志村さん。
そうなんですか?
早く行こう、泣かれるぞ。
「じゃあ、後頼む」
「や―!パー、パー」
ほら始まった。
サルーは早く行けと言う腕の中でひっくり返ってる。
行ってらっしゃいというちび達の声に見送られ、俺たちは、岸壁へとやってきた。俺の所は四歳と三歳の女の子と生まれたばかりの男の子。志村さんの所は、四歳の男の子と女の子、ジルもモエもリルも兄弟だ。
すごい活気。下からはものすごい声が上まで聞こえている。リヤカー二台で下へ向かう。
これぞ漁師町と言った賑わいだ。大市も始まるからすごい人だ。
小さな船から降ろされる入れ物は新鮮な魚たち。野菜や果物もある。
これは一番近い、カナップ諸島のケナという島から来る船だ。
「おーい、志村、ササ!」
手を振っている人の船にはまるで岩のような物が山になっている。
「おはようございます、オーいいですね」
「むいてみるか」
「はい、お願いします」
手のひらより大きな岩のような物を取り、そこに金属のへらを入れた。
「二年ものだが、いい出来だ」
プリップリの牡蠣の身が顔を出した。
「うわー」
「でかい」
「リル、食ってみろ、佐々木君も」
志村さんは自分で牡蠣を開け大きく開けた口へ入れた。
「んー」最高!
親指を出しています。
「うまい、みるきー」
「おいしいおっきい!」
一口じゃ無理だと、口いっぱいほおりこむリル。
アタリ貝は腹痛を起こし死ぬ人もたまにいる。日本で売られているのは綺麗な水に入れ殺菌したものだ。
俺たちは水槽を作り、自然にできた牡蠣をもとに養殖に着手。この島ではできないが、できる場所を見つけた。
今回は俺は留守番だがジルにはいい機会だ、リルもいつか連れていこうと思っている。
師匠こんなにどうするんですか?
「焼き牡蠣にするぞ!」
外の焼き肉用の場所でやるんだ。
生は、ここでしか食べれない。最高のものだしな。
「あー、志村、何うまそうなの食ってんだよ!」
見つかった。島の漁師だ。
「売りもんだぞ、鉄二枚!」
「おーい、アタリ貝だ、生は今だけ、味見したいのは、鉄二枚だとよ!」
彼の一声で、うわっと人が集まってきた。
「今だけ、スヌール、悪いけどシートをかぶせてくれ」
「あいよ、待ってな、今最高の食わせちゃる」
並んで並んで。
自分で開けるという人もいるし、開けるのを待っている人もいる。
俺は鞄を開けると、そこに小銭が入っていく。リルはそれを抑えている。
「うめー」
「さすが新鮮だ」
「今日の昼は牡蠣飯と焼きガキだぞ」
ウオーというような歓声だ。
その横で俺は、スコップでリヤカー二台に牡蠣を移している。
ジャッと言う貝の音がなんともいい。
「そろそろ時間だ、腹壊すからここまでな、また三日後来るからよ」
「うまかったー」
「最高だな」
「カー、酒が飲みテー」朝っぱらかよ、あははは。
「後は店にきてくれよな」
オウ、じゃなとみんなが買いものに仕事に戻っていく。
「いくらになった?」
わかりませんよ、後でサル―さんに勘定してもらいます。
鞄のふたを閉めると師匠は、軽くなれと言ってリルにカバンを渡した。
これだけですっと軽くなるんだビックリするぞ。
「ははは、俺は酒が持って帰れればそれでいいし」というスヌールさんも残りを入れ始めた。
「とにかく運んでしまおう、氷出すぞ」
師匠は、アイスというと大きな氷の塊を一番上に乗せシートをかぶせた。
スヌールさんは船を洗ったら店に行くという。
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