第一話 水揚げ

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カキの養殖は志村さんが教えた、只いかだは俺が教えたんだ。 いい漁場で、一年でもいいものができたから、量産したんだ。牡蠣は三年物がおいしいというけど試しで上げた物が今日入荷されてきた、うまかったから上々だろう。 そのままリアカー一台を今度は港の端にある場所へもっていく。 ジャージャーと水の流れる音がしている。 「おはよう」 「おはようございます」 「頼みます」 「あいよ」 ここは、加工食品の工場、いろんなことをしているけど、牡蠣は、ここにもってきて身を外してもらうんだ。貝殻は再利用、またカキの養殖に使うから取っておくんだ。 「でかいな」 「おはようございます」 「うす!こんなの見たことねえぞ」 これからの売りになるのでよろしくお願います。 一時間後にきてくれ。 お願いします。 「生は食えそうか?」 「三日後にと志村が言っていました、それやめてくださいね、腹痛起こしても責任取れませんから」 ハハハという工場長は、昼飯を食いに行くと言っていた。 そしてもう一台はもう坂の半分まで上がっていた。 「ウオー」 軽くなってびっくりしたという志村さん。一時間後に取りにこいだそうです。 「よし、こっちは焼きガキの準備だな」 俺は生より、焼いた方が好きだな、でもフライが一番好きといった。 「これ、フライにするの?」 最高だぞという声がしている、只今日は足りないから、次なという。 「でも次は師匠がいないー」 大丈夫、佐々木ができるから。 「出来るのー?」 「あー、疑ってる、志村さんコイツに言ってくださいよ、俺も使えるって」 使える、使える。と笑いながら言ってるよ。 帰ると、こんなにたくさんどうするのという女性陣。 とにかく、今日は、焼肉よりもこっち。外の網で焼いて食べる。 バケツに氷を入れ、その中に牡蠣を入れていく。 「味付けは、しょうゆとポン酢、後は別料金を取るからな」 「調味料にチーズ?お金取るの?」 「とるんだ、リリアは?」 「酒蔵です」 「それじゃあ、今日のうどんんのおにぎりは牡蠣飯。定食は牡蠣飯定食。米だけは研いでおいて、昆布だけ入れといてくれ、それじゃあ、今日も一日、よろしくお願いします」 今従業員は十人。子供たちは、学校から帰ってくるのは午後だから、それまでは大人たちで頑張る。ジルは年齢で学校を卒業、ただ、まだ教えてほしいから夜間の学校へたまに行く。 俺もまだ文字が拙いから、学校は通っている。 それは志村さんもだけどな。 店は十時開店、夜はうどん屋は七時、下は九時閉店だ。プリン店は五時で終わる。 今は、レシピを渡して、別なお店で作れるようになった。 リカーショップフェネースト酒屋はリリアが仕切っている。フェネーストはリリアの苗字、こっちには男性二名と女性が一人、お酒だけじゃなくいろんなものも扱っているからね、ここは七時で終了。 八時半、牡蠣を取りに行った子たちと船を洗い終わった彼がやってきた。 スヌールさんは、リリアのいる酒蔵へ行き、リアカーに酒とお酢を積んで帰っていった。 お金?まだ物々交換の方がいい。 「いいか、洗った牡蠣を酒と水半々の量でひたひたにならるほど入れ、たっぷりのしょうがを散らして煮てくれ、あまり煮すぎないように。洗った米に、煮汁と水を入れ、出汁のもとを入れご飯を炊いてくれ」 「おにぎり無理じゃないですか?」 米だけを先に軽く握ったら、煮た牡蠣を差し込むんだ。 一個だけ? ああ、一個で十分だからな。 志村さんにケチだなというけど、まあやってみないとな。 外は準備ができていく。 待ちきれない人たちが集まりだした。 朝市を終えた人たちや船乗りが一杯ひっかけにやって来るんだ。今日はうどん屋より焼肉屋の方が忙しそうかもな。 準備があるから十時何だけど、何時も九時過ぎには開けるんだよな、まあそれを知っているから、最初はうどんばかりでるからいいんだけどな。 「佐々木君、前頼んだ、網の半分のはどこだ?」 「外の炭焼きの入り口にあります」 「そっか」 どうするんですか? 一人用にするんだという。 一人用? 「ちょっとここ頼む」 外に行くと炭小屋を覗いている人。 「これです」 ちょっといいかというので、手伝う。 四人掛けのテーブルのアミ、それを分けるように中央に網を立てておいた。 「一人もんの相席でどうだ?」 そういう事か、いいですね針金で止めましょう。 「オーナー、店長、店開けます!」 と上から覗き込んで声をかけられた。俺たちは上を見上げてを振った。 「おう」 「頼む」 焼き肉やはうどん屋の真下になる。 本当は隣でやっていたんだけど、案外人の声は通り、下には住みにくいと出て行く人が続いたんだ。 そこでここで焼き肉屋をすることになった。 階段を少しだけ下って行った眺めのいい場所で、ここは半分が山の中だ。 外でごそごそ上が開店してもセットをしていたんだ。 「オーナー、おひとり様です」 お早いな。 「バケツ一つ持ってきて」 「俺が行く、佐々木頼む」 「はい」 お客様は、一人が多い、夜とは違う。あっという間に席が埋まってしまった。 「すみません、相席よろしいですか?」 「ああ、どうぞ」 焼き方はお好きにどうぞ、口が少し空きましたら、これを手にはめてください、軍手が無いとやけどをしますからね。貝を開けて、中の汁が減ってきたら、食べごろです。まずは何もつけずお食べください、次に味をつけて食べたければこちらの調味料を、追加で食べたければ、店員へ声をかけて、バケツを取りに行ってくださいますか? 「うん、酒ももらえるかな」 「かしこまりました」 「ひえー、すごい人、焼きガキ食えるかな?」 「いらっしゃい、一人?」 「うん、アタリ貝は怖いんだけど、うまいんだよねー」 「そうなの?」 「フフフ、怖いぞー」 「まったく、子供怖がらせて同すんだよ。どうぞ、相席でもいいよな」 「うん、お願いします」 ノスコールさんです。 「すみません、相席でもよろしいですか?」 「どうぞ」 すみません。 やり方はわかるよね。 「うん、あー、お酒もいいかな?」 「はい、あんまり飲みすぎるなよ」 「夜勤明けだ、いいだろ?」 「そうか、それはご苦労様、今お持ちしますね」 外では待っている人たち。 黒板へ名前を書いて、その隣に何名様か書いてもらっています。階段や手すりに腰かけ待つ人たち。 「クエールート様四名様、お待たせいたしました」 そして上では。 「かけうどんひとつ。今日のおにぎりすごいね」 「今日はね、サービスなんだ」 「牡蠣飯定食お願いします」 カキは、漁師以外はあまり食べたことがないようだ、今の寒い時期だけ限定。 冷蔵庫がないからね。 それでもうまいと言ってもらえるのはうれしいもんだ。
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