第二話 外の世界へ

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その日の夜、もう一度最終確認。 「カキフライは、前の日に仕込みをしておいて、揚げるだけにした方がいいからな」 「じゃあ前日水揚げですね」 昼過ぎに来る、志村さんたちが村に入って、収穫を手伝ってから送ってくれるそうだ。 氷は準備できてるし、今度は今日の三倍、工場には話しをしてある。 パン屋に行ってパン粉を取ってくるのと、脱穀していない米を精米してもらうように等々、話は、一か月留守になること最悪三か月の予定をメモした。 カキは三日に一度くる。 メニューを変えるのは定食だけで、焼きガキに回してくれればいい。 生は生食用で別になっているから注意。 クリンちゃんもいるし、リリアもいる。サル―もいるから大丈夫。 お前ならできる、頼んだぞ佐々木店長。 「はい!」 「リル、補佐頼むぞ」 「はい!」 「ジル、大丈夫?」姉ちゃん。 しんどかったら船で寝る。 考え事? うん、ちょっと。 「そう、ジル」 ん? 「師匠の事頼むわね」 「うん」 すると頭に手が乗った。リリアだ。 「頼んだぞ一番弟子」 「…うん、行ってきます」 「ジル、これもってけ」 俺は短剣を渡した。 「ササ、いいのか?」 「オウ、いいか、志村さんはほっといてもいいからな、お前は自分の身を守れ」 「でも」 「んー、そうだな、クリンとリリアが云うのは、志村さんが無理なHPの使い方をしないように見張れという事だけだ、でもな」 もしも、自分の身に危害が加わる様なら、その時は、自分だけ助かる道を探せ、志村さんは一人でもどうにかなる力がある。いいな、絶対無事に帰ってくるんだぞ。 「…うん」 二人は、俺たちが眠っている間に出ていく。そうしないとちび達が泣いて大変なのが目に見えているからな。 リリアはもう子供はうんざりだと、これ以上はいらないと言ったらしい。 それとこれとはどうなのかわからないが、クリンこっちは臨月だ。 絶対無理をするなよ、何かあったら先生の所へ行けよと。 最後まで、溺愛っぷりを見せた志村さんだが、今回の商談だけは、何とか成功させたいという意気込みが伝わる。 東の国、アーリウエスト島、サウザンドアイランド島は唯一魔物が出ていない。そのため、西からの人々が押し掛け、それは大変な目にあっている。 俺達の島の北、ヒールランド島もだいぶ元に戻りつつあって、人が戻り始めている。 ただ東をめざした人は、大金をはたいて、死ぬ思いをして向こうへ渡った人たちだ、大丈夫、安心できます。と言われても、はいそうですかといって戻ってくるのは相当な覚悟がいるだろう。 俺達がデンドンで世話になった冒険ギルド長、それと、商業ギルド、おかまちゃんのアリは今、サウザンドアイランドの北にある国々の調査に向かっている。 実は近隣国から大量の除草剤の注文が来ているのだが、志村さんは、あまりに使いすぎるとそれも大変なことになるために打開策を探しているといったところだ。 教会のほうは早くから、目玉の植物と、ベルベットストーンの回収、悪魔の実となずけたものは、あちこちに張り出され、宝石は悪魔を呼び込むものとして回収することを望んだのだが。 金にも何もならない宝石は、その辺に捨てられたまま、子供たちは、注意されても目玉を踏みつぶすだけ。 それが悪魔の根源だと教えられてもどうにもならないのだと、困ったと頭を悩ませる人たち。 王様だけではなくて、民、人間の心の奥底に潜むものが、ダークツリーなのだということが、今一つ分からないといったところなのだ。 この島では、保育園と小学校低学年で、大統領となったキリクさんの父に聞いた昔話を紙芝居にして教えているためか、興味があるからか、まあ、みんな話だけは分かっていると思いたいのだが…。
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