2人が本棚に入れています
本棚に追加
梨々花(りりか)に聞いた
夏休み前の期末テストが迫って来ていた。まだ、正式なテスト期間ではないけどそろそろ復習しないとまずい。
部活に入っていない私は図書室へ行って少し勉強しようかなと思っていた。たまたま同じタイミングで教室を出たテニス部へ向かう梨々花と一緒に廊下を歩いた。
「嫌だなぁ、テスト。妃奈は余裕でしょ?」
「そんなことないよ。テスト範囲が広くて軽くパニック。」
余裕ではない。まだまだ確認できてないことがあるし、練習問題もあまり解けていない。計画的に進めないと、いつものような点をとるのは難しそうだった。
「でもさ、休み時間に涼太とかに教えてあげてたじゃん?偉いよね。私自分に余裕がないときは、優しくできないもん。」
私は思わず梨々花の顔を見た。
「なんか変なこと言った、私?」
「あ…いや。」
梨々花は少し心配そうな顔をしている。正直に言った方がいいかもしれない。
「ちょっとこれ自分で言うとあれだけど…『妃奈なら頭いいから大丈夫だよ』的なことを言われると思ってたから…。」
言ってから、とても恥ずかしくなった。手をブンブン振って「ごめん、今の無し!」と目を合わせず言った。
「よくわからんけど、私は妃奈は頭いい上に人間できてるなってよく思うよ。なんかこう、勉強だけじゃなくてさ、校外学習の班決めの仕方とか委員会の仕事とかみんなが納得するようなやり方考えるのも得意じゃん?」
そんな風に自分のことを思ってくれているのか。特別意識してみんなに勉強を教えたり仕事のやり方を考えたりしているわけではなかった。ただ自分ができることで、人の役に立つのならと思って動いていただけだった。
「私は妃奈になりたいわぁって時々思うよ。…なんてね!」
じゃあまた明日ね!と、梨々花は階段を下りて校庭へ行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!