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夏野(なつの)に聞いた
ああ、最後になっちゃったな。日直日誌を書いていたら、教室には誰もいなくなった。
荷物をまとめて出ようと思った時、ちょうど教室に夏野が入ってきた。本を持っているから、図書室に行ってたみたいだ。
「お、涼太まだいたのか。」
「いやぁ、これ書いてたら遅くなっちゃって。」
僕は日誌を持ち上げて見せた。そっか、と夏野は頷いた。
「偉いな、丁寧に書いてて。」
「そんなことないよ。僕は書くのが遅いだけ。これだって、ほとんどの部分妃奈が書いてくれたんだよ。申し訳ないから最後のとこだけ任せてもらったんだ。」
本当に妃奈には頭が上がらない。いつも優しいけど、あまり頼っていると呆れられてしまいそうだ。
「もっと、テキパキ動けたらいいんだけどな。自分が嫌になっちゃうよ。」
思わず口に出してしまった。すると、夏野が意外そうな顔をして言った。
「俺からすれば、お前は愛されキャラでお得感満載だけどな。」
「愛されキャラ?」
愛されキャラ…頭の中でもう一度今聞いた言葉を繰り返す。え、僕が?
「だって、お前って自分のできないことを素直に言えて、手伝ってもらえて、きちんとそれに感謝できるだろ?それって意外と難しいんだよ。俺みたいな奴からすると。」
僕は自分を鈍くさくてお荷物的な存在だと思ってたけど、そんな風に見えてるのか。
「俺は、お前みたいになりたいよ。…じゃ、また明日!」
そう言って、夏野は教室から出ていってしまった。教室にはひとり残るという寂しげなシチュエーションとは裏腹に、僕の心は今の言葉にホクホクしていた。
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