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涼太(りょうた)に聞いた
今日は遠方の親戚が来るから早退しなさい、という母さんの言葉を忘れず、私は部活を途中で抜けた。下駄箱でたまたま涼太に会った。
「あれ、梨々花部活は?」
「今日親戚来るから早退すんの。」
僕は日誌書いてたら遅くなっちゃって、という涼太と流れで一緒に下校し始めた。
「へぇ。偉いね、ちゃんと書いて。」
「それ、さっき夏野にも言われたけど、ほぼほぼ妃奈が書いてくれたから。」
恥ずかしそうに笑っていう涼太の顔から、私は目をそらした。
「妃奈、優しいもんね…。」
「そうだね。頼りっぱなしで僕は申し訳ないんだけど。」
ああ、涼太はきっと妃奈のことを大事な存在だと思っているんだろうな。
「私も勉強ができて優しくて、みんなの頼りになる存在だったらいいのに。」
思わず呟いてしまってから、何を言っているんだろうと私は恥ずかしくなった。涼太はきっとこんな愚痴っぽいことを聞きたくはない。
「え、梨々花は十分すごいと思うよ。」
意外な言葉が涼太の口から飛び出した。私がすごい?
「梨々花って一回も忘れ物したことないでしょ?それに、係りの仕事とか授業の片づけとか全部手早く終わらせてるし。」
「そんなの、普通だよ。」
そうかなぁ、と涼太は首をかしげている。
「妃奈は頭が良くて優しいと僕も思うけど、梨々花は先を見越していつも行動しているから、違う意味で頭がいいと僕は思ってるよ。僕はいつも鈍くさいから、梨々花みたいになりたいな。」
そんなこと言われたら、変に期待してしまうからやめてくれ、と私は心の中で叫んだ。きっと素直な涼太に他意はないんだろうけど。
「そうかな、ありがと。じゃ、私こっちだから!」
これ以上は心臓が持たなさそうだったから、私は嘘を吐いて家とは違う方向へ道をそれた。
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