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じわりと浮かんだ涙を拭っていると、ふと優しい香りが私を包んだ。
「まさか勘違いさせていたなんて思わなかった、ごめん。俺の中では、一世一代の告白のつもりだったんだけどな」
「そんなふうには聞こえませんでした」
「悪かったな、口下手で。はぁ……でもよかった。振られたのかと思ってこの週末、めちゃくちゃ悩んでた」
「そうなんですか?」
「あんなもの突き付けられたら落ち込むだろ。お前には振り回されっぱなしだ」
普段凛として、隙が無い新堂さんが、私相手にしゅんと肩を落としている。そんな一面にキュンとして、彼のことをもっともっと知りたいと、欲深くなっていく。
「でも……先週綺麗な女性とデートしてましたよね」
「は?」
「表参道で見かけました。仲良く歩いているところ」
おずおずと言えば、新堂さんは天井を仰ぎ、ため息を零した。
「なるほど。それがさらに勘違いに拍車をかけたんだな」
まるで分析するような口ぶりに、首をかしげてしまう。しかも薄っすらと笑ってる?
「あれは姉だ。こっちに遊びに来たはいいけど、右も左もわかんないって言うから案内しただけ」
「お、お姉さん?」
冷静な口調で言われさらに脱力感が襲う。
なんてありがちな勘違い。あの姿を見て、人前でわんわん泣いた自分が途端に恥ずかしくなる。
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