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普段はのほほんとしているくせに、ベッドの上では大胆な発言を繰り返し、俺の胸を毎度射抜いてくる。
小悪魔とは、乙葉みたいな女をいうのだろうと、この年にして知った。
あいつが入社してきた時から、俺は乙葉が好きだった。小さい体で、懸命に頑張る姿は、俺の心をあっさりとかさらっていった。
どうして二年近く想いを告げなかったのかと聞かれれば、乙葉が社内でマスコット的な存在だったからだ。それに振られたらあいつが気まずい気持ちになるだろうと思い、なかなか行動に移せなかった。
だがあの晩。あいつはすでにぐらぐらな理性だった俺を誘惑した。これまで堪えていたものが溢れ、何度も踏みとどまったものの、最後は己の欲に負けてしまった。
「責任取る」
行為後のあの言葉で、俺は彼女に盛大な勘違いをさせてしまったらしいが、今では反省して、気持ちは素直に伝える様にしている。同じ過ちで、彼女を失いたくないから。
とはいえ、そう意気込んでも口下手なのはなかなか直らない。
「あ、見てください。これも可愛いですね」
「なんだ? それは」
「箸置きです」
「そうか」
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