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猫の肉球の形のそれを手に、ニコニコとしている。それのどこが可愛いんだか。女の趣味とはいまいち理解できない。
それより一生懸命吟味している乙葉の方が、何倍も可愛いと思うが。
「これ、買ってもいいですか?」
「あぁ。好きにしたらいい」
そう言うと乙葉はちょっとつまらなそうな顔をした。何かまずいことでも言ったか?
「あの、さっきから私ばかり浮かれてて、快斗さん退屈そうですね。買い物嫌でした?」
思わぬことを問われ、目を瞬かせる。つまらないわけがない。俺はこれでも目一杯楽しんでいる。
「同棲も、私から言い出したことですもんね……」
しまいには店の中だというのに、泣き出しそうになっている。なんでそうなる。
「無理して付き合わせちゃってすみません……あの、嫌だったら嫌だって言ってくださいね」
静かに言って、箸置きをコトンと元の場所に置いた。その背中が泣いているように見えて、俺は慌てた。
「嫌なはずないだろ? 買い物だって、同棲だって、その……俺もわくわくしてるっていうか。これでもめちゃくちゃ楽しんでる」
「え……あの」
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