感情、知性の複合体

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ピアスまでつけて見せると 「パールもあるから黒ね。どっちの高さでもいいわよ」 と裕子さんはピーコックグリーンのパンプスを箱に片付ける。 「こっち…大丈夫そうです」 「そんなに歩くところもないからね、3センチのブラックスウェード…全体に上品な大人の女性に仕上がるわ、決まり。ヘアアレンジの希望はある?」 「…やったことないから…」 「私に任せてもらっていい?」 コクン… 裕子さんの髪は、今は肩に当たらないくらいだけれど、以前はロングでセルフアレンジが得意だったらしい。くるくると私の髪を巻いたのにさっさと編むので不思議に思っていると 「ストレートのまま編んでもふわりとしたボリュームが出ないでしょ?装いが大人だから、纏まりすぎると老けて見える可能性がある。だから玖未ちゃんの年齢にあったゆるふわに仕上げるわね。シンプルなワンピースには髪もアクセサリーよ」 話をしながらも手を動かす裕子さんは、両サイドをロープ編み…ひとつにまとめてくるりんぱ…毛先をゆるく三つ編みして完成…いい感じにほぐして…と説明もしてくれているようだが、私にはさっぱり分からない。 もう自分が使わなくなった物でごめんね、と言いながらパールを散らしてから 「三面鏡で見ておいで」 洗面所へと私の背中を押した。私は初めてのヘアアレンジに少しドキドキしながら両サイドの鏡を使って後ろを見ると…自分じゃないみたいだ。 「あ…プリンセスっぽい…可愛い…」
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