心得違い

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繁華街の店側は女を知っているわけがないのだが、常に組員が数人見回ったり利用したりしているので女を見かけた。今夜の聞き取りで特定の女を須藤がマークしているということはすぐに広まるだろう。幸い女の外見も特徴的で分かりやすい。 女が来店したという2店には組員が聞き取りを行うと同時に、俺たちは繁華街を歩き始める。 繁華街はまだまだこれからという21時半。しかし、この時間が食事から二次会へ移動する客や、学生や会社の一般的な飲み会という集団の解散直後ということが多く通りに人が多い時間だ。本来、この時間に俺がここを歩くことはないが今夜は、極一般的な客たちにここが須藤のテリトリーだと知らせる意図もある。 「おはようございます、若」 店の前から声を掛けられてもいつもは立ち止まらないが今日は足を止める。 「須藤を嗅ぎ回る新規の女性客に心当たりはありませんか?」 「かなりボリュームボディの女」 野沢と右京がこうして俺たちの目的を何度か伝える。すると、それが野次馬の耳に入り界隈に広がっていくのだ。 「ご報告します」 ひとつの店に聞き取りに入っていた千田が俺たちに合流し、歩きながら小声で伝える。 「女の言葉で言うと‘私は須藤さんや本間さんの背中の刺青を見たことがある’そう言っていたそうです」
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