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「失礼します。お久しぶりです、ゲンさん。隣をはじめ、うちがご迷惑を掛けていることはないかと、本日は伺いました」
「ない。ご苦労さん」
チラッと俺を見て手を上げたゲンさんの向こうに、あの女…いた。手を上げた感じでは客と思っていないだろうゲンさんの前へ、カウンター越しに立つと
「じゃあ、仕事は終わったってことで、飯食わせてもらう」
そう言い椅子に手を掛けると
「客か?3人ならテーブル空いてんぞ」
と顎で示される。
「ここでいい。里、来てたのか。食ったか?」
「食った」
「飲むか?」
「いや、帰る」
「伝票置いていけ」
「ありがとう。ゲンさん、クミちゃん、ごちそうさま」
情報収集したのか?ヒラヒラと手を振って出て行く里に
「ありがとうございました」
淡々とした女の声が当たる。やはり温度のないそれにゾクゾクする…と思いながら座ると
「クミちゃんっていうの?前に来た時には見なかったよね?何クミちゃん?」
とさっさと座った右京が聞く。
「何しに来たんだ?女と喋りたきゃ、そういう店に行け。うちは食堂だ」
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