策を弄する

4/14
前へ
/392ページ
次へ
「失礼します。お久しぶりです、ゲンさん。隣をはじめ、うちがご迷惑を掛けていることはないかと、本日は伺いました」 「ない。ご苦労さん」 チラッと俺を見て手を上げたゲンさんの向こうに、あの女…いた。手を上げた感じでは客と思っていないだろうゲンさんの前へ、カウンター越しに立つと 「じゃあ、仕事は終わったってことで、飯食わせてもらう」 そう言い椅子に手を掛けると 「客か?3人ならテーブル空いてんぞ」 と顎で示される。 「ここでいい。里、来てたのか。食ったか?」 「食った」 「飲むか?」 「いや、帰る」 「伝票置いていけ」 「ありがとう。ゲンさん、クミちゃん、ごちそうさま」 情報収集したのか?ヒラヒラと手を振って出て行く里に 「ありがとうございました」 淡々とした女の声が当たる。やはり温度のないそれにゾクゾクする…と思いながら座ると 「クミちゃんっていうの?前に来た時には見なかったよね?何クミちゃん?」 とさっさと座った右京が聞く。 「何しに来たんだ?女と喋りたきゃ、そういう店に行け。うちは食堂だ」
/392ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10277人が本棚に入れています
本棚に追加