感情、知性の複合体

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ピッタリと俺の玖未に寄り添うように立つ女は、玖未への羨望や嫉妬を攻撃材料にするのではなく、無理やりにでもこの輪の中へ入ろうという考えなのだろう。 これまでの玖未への態度から、女が玖未を下に見て邪険に扱い、優越感に浸っていることは明らかだ。 だが、玖未を攻撃するのは自分の身のためにならないと空気を読んだのか、それとも玖未を落とす発言等をすることよりも、玖未と仲良くして自分も玖未のような扱いを受けることを選んだか…そんなことには絶対ならないが…やはり1か月後だな。 玖未の腰を抱いてゆっくりと歩きながら、野沢と目を合わせてから俺が支配人の頭に視線を送ると‘承知’と野沢が目礼する。これで俺たちの食事中に1か月後の手配も済む。 今日、劣等感を抱えて玖未から離れてくれるのが一番手間がかからないが、このしらばくれた態度を見ると、めちゃくちゃしぶとそうな女だ。 何が‘あ…玖未、ごめん、ごめん、来てたんだ。気づかなかった’だ。 お前の前で、右京ががっつり玖未を絶賛してたのを聞いてただろうが。玖未にはしらっと嘘をつくのもずっとなのかもしれない。 今日は玖未が食事を楽しむことと、女に多少の劣等感、焦燥感を覚えさすことが目的だ。 ペコリ…ペコリ… 「ん?玖未、誰かいたか?」 俺が耳たぶに唇をつけて囁くと、まだ女の前で組員とは言えない玖未が冷たい視線を寄越す。 「ゾクゾクする目だ、玖未」 チュッ…わざとリップ音をたてると、女が聞こえてないことをアピールするかのように通路の天井を観察した。
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