感情、知性の複合体

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「悠仁…私、泳げないの…」 「アハハ…玖未、大丈夫だよぉ。ホテルのプールでガンガン泳がなくても、もっと優雅に楽しめばいいんじゃない?ってか、プールに行ったことある?」 「あ…ないね。学校で…水が怖くて…絶対泳げないって思ったきりだ…」 「しかも学校っていつの話よ、小学校?中学にはプールがなかったもの…って…ごめん、玖未」 「うん?」 「ここで学校の話をするの…まずかったかな?」 「どうして?大丈夫だよ?」 「へぇ…そうなんだ。中卒とかって、全部話してるってこと?」 「うん」 「親とか施設とかも?」 「うん」 レストランへ入る前に、玖未を落とす発言は控えると計算したか?と思ったが、話を始めれば長年のクセは抜けないらしい。庶民居酒屋からここまでチクチクと玖未を刺してきやがる。だが玖未は悪く受け止めてはいないようだ…悪く受け止めると友達がいなくなる…中学なんかでは無意識にそう思っていたのかもしれねぇ。 胸くそ悪い奴だ。庶民とか大衆とか、お前はブルジョアジーなのかよ。 右京が付き合うなどないとすっぱり切りつつ、玖未の友達として首の皮一枚で繋がりをキープしたのには訳がある。もうコイツは玖未から離すべきだが、1か月後に自分から離れてもらうために誘うと、また玖未を落としにかかりやがる。 「一緒に住んでいるだけでなく親にも紹介してますし、玖未とはお互いに何も隠すことのない関係ですよ。愛し合っている…互いが互いの唯一ですから」
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