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繁華街
「ゲンさん、おはようございます」
「おはようさん、玖未」
夕方の5時だけれど、出勤の挨拶は‘おはようございます’がお決まりだ。
大きな繁華街の一番端に位置する‘食堂まる’は、ここが繁華街になる前からあるらしい。
現在は来年還暦を迎える丸井源太さんの代で、私、天野玖未は高校1年で中退後、調理師免許を取っていくつかの飲食店で働き、ここではちょうど1年が経ったところだ。
18:00~0:00という営業時間のここには、繁華街で飲む前後の食事に来るお客さんや、ご飯とお酒という組み合わせを好む人たちが来てくれる。
「ビール、入れますね」
「半分ほどな」
「はい」
裏から入った時に、置きっぱなしになっていた瓶ビールを冷蔵庫に入れていると
「食うぞ」
ゲンさんの声がする。
「はい」
今これを入れると言ったばかりだよ…開店前にゲンさんがせっかちなのはいつものことだけれど。ビールを冷蔵庫に入れてから手を洗うと
「いただきます」
一人鍋に用意してくれている食事をゲンさんの隣でいただく。今日はニラ豚団子の春雨鍋だ。キャベツともやしがたっぷりで美味しい。
「今日の小鍋メニューですね…美味しい」
「去年、玖未が出したメニューだな」
もう一年経ったんですね…私はその、あと一言の会話のキャッチボールが苦手なままの大人だ。
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