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「そうですか。外ではそこまでにして詳細は後ほどお願いします」
野沢の声に頷き、そのまま後ろについた千田はたくとよく似た目元を鋭くしている。もう一店からも組員が引き上げてきたので、繁華街を半分と少し歩いたところで引き上げることにした。
ゆっくり最後まで歩いていては帰りが遅くなる。すぐに屋敷へ戻り、報告を聞いた。
女はどちらの店でもカウンターでビールを飲み、すぐには帰らないようなので店の者が‘待ち合わせか’‘この辺りは初めてか’など当たり障りなく聞き始めたらしい。どこからどんな女が送り込まれるか分からないのだから、これは当然のことで、その答えが用意周到な嘘かどうかを見分けたいところだ。
「ふふっ…初めてって言っても…私は須藤さんや本間さんの背中の刺青を見たことがあるんですけどね」
というのが女の答えで、その様子はとても自慢気にも見え
‘ほら、私に何でも聞いて。聞きたいでしょ?’
というオーラが見えたらしい。しかし須藤の店ではそんな戯れ言に付き合う奴はいない。俺たちの刺青は繁華街では有名なので‘見た’など誇張して話の中心になりたいだけの奴だと認識し、そのあとは話をしていないらしい。
「反応が期待通りでなかったので2店目へ行って同じように話をした、ってところか?」
「右京さんの言う通りとも思えますし、オールブラックの装いでってところから…ほんの憶測ですけれど…玖未さんを装おって何か発信しようとした?いやぁ…無理なんですけどね、あんなんが若の女のはずがないし…でもアイツ、頭、おかしいでしょ?」
「千田…ムカつく憶測だが…可能性がゼロでないところが…素人の怖いところだな」
「はい、若。若の荒獅子に色が入ったことは周知の事実で、でも玖未さんのお披露目をしたわけでも通達が出たわけでもありませんから」
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