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まるの反対側近くに位置するバーのカウンターを、ママさんや私、5人が占領するように座ってしまう。
ママさんの店もまるも0時までだが、ここは朝まで営業しているバーだ。カウンター越しにアルコール提供するだけで‘接待’の有無で言えば無し。だから朝まで営業が出来るのだ。こういう規制は年々厳しくなっていると繁華街の人には聞いている。決まった数人しか知り合いはいないけれど、一人で飲んでいても耳にするから。
「さっき、須藤さんの車でしたよね?」
「そうね。運転が本間さんで、助手席に野沢さんがおられたから若さんでしょうね」
「しばらく見てないんですけど…最後にうちに来られたのはいつでしたっけ?」
「3ヶ月近くなるかしらね。若さんがお越しにならないのは、うちに問題がないということだと思っていいわよ。ねぇ、マスター?」
「はい」
私を挟んで女性スタッフとママさんが話をするけれど、私はその内容よりも皆さんの名前が出てくるのを、まだ待っているのに出て来ない。イチゴのマティーニに添えてあるイチゴを口に入れると
「玖未ちゃん、まるには若さんは来られない?」
と女性の一人に聞かれた。
「…若さんがどなたかわからないから来られてないんだと思います」
「そっかぁ。すっごいワイルドイケメンだよ~」
「あれは、ワイルドフェロモン男っていうのよ」
「それは否定出来ないけれど、私は野沢さんのレンズ越しの視線に犯されたい」
「私は本間さんの…ウフフフッ…クールな表情からのキラースマイル…何ならウインクつき…想像だけで悶絶…イケそうよ」
3人のお好みはそれぞれのようだが、私には関係のない人たちの話だ。
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