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「全然寝ないからユキにも心配されちゃった。ユキだって眠かったはずなのにあたしが起きてるから……」
「淡雪……インコと離れて大丈夫なのか、日和は」
「大丈夫じゃないよ」
日和は危険な光を宿した目で俺を見た。
「全然大丈夫じゃないよ」
セキセイインコの淡雪を愛する日和。その溺愛っぷりはかなりの重症であり、ノーインコノーライフと言っても過言ではない。日和のことをマドンナだと言っているやつらはこいつの本性を知らないのである。意外と子供っぽいところがあり、インコに並々ならぬ愛を注ぎ、にやにやしながら鳥の写真を撮る女だ。
今朝の写真を撮って待ち受けにしているのだと日和は言った。これで修学旅行中も一緒にいられるそうだ。そして毎朝母親に写真を送るように言って来たらしい。ペットを大切にするのはいいことだが、ここまで来ると少し怖いくらいである。
「明日の自由行動楽しみね! 抹茶パフェとか食べたい!」
「美幸、明日は自由行動ではなくて自主研修だ」
「わ、分かってるわよ! 何よもー! こーちゃんのガリ勉!」
「ガリ勉じゃない」
美幸が不服そうに膨れたところで各班の点呼が完了したらしく、先生から声がかかった。まだ少しざわついていた生徒達が徐々に静かになっていく。
「ではこれから出発です。みんな行った先の人に迷惑をかけないようにー。星影生として誇りをもって行動すること。でもめいっぱい楽しめよ。先生達もみんなが楽しんでくれると嬉しいです。それじゃ代表からひと言」
「いい思い出をみんなで作りましょう!」
一組の学級代表の女子が言う。それを合図に歓声が上がった。
汽車に乗ってひとまず長万部だ。いよいよ修学旅行が始まる。
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