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「相生社ってところが途中にあったでしょ? 縁結びのお社で、ここにも恋愛成就のお守りとか色々置いてあるよ。朝日君も一つどう?」
日和はにやにやしながら言う。その顔はおまえのことをマドンナだと思っているやつらには見せない方がいいぞ。
日和の言う通り、様々なお守りが並ぶ中にかわいらしいデザインのものがいくつかあった。美幸が一つ手に取って巫女さんに渡す。
「恋愛のはいいかな。おまえは?」
「あたしはそこの小さいお守りにしたよ。葵の葉っぱがかわいいでしょ」
「ふうん」
「ねえ、これは? 河合神社のなんだけど」
日和が教えてくれたのは真っ黒なお守りだった。紐の部分がそれぞれ色違いのようだ。
「女の人の美容にいいってところだけど、これはそうじゃなくて……。えっと?」
近くにいた巫女さんが助け舟を出してくれた。曰く、八咫烏の祀られている社があり、この真っ黒なお守りはその社のものだそうだ。つまり道を示してくれるのだろう。
「朝日君、夕立のこと気に入ってるからさ。カラスのお守りどう?」
「別に気に入ってるわけじゃ……」
そう言いつつ、俺は真っ黒なお守りを手に取っていた。他の八咫烏のお守りを持って帰ったらあいつはどんな反応をするのだろうか。
……やきもち?
「いやいや……」
「朝日君?」
どうして俺があいつにやきもちを妬かれなければならないんだ。
「……このお守りにする。道が明るいに越したことはない」
「カラスのだよ、って夕立に見せてあげたら喜んでくれるかな?」
「……どうだろうな」
巫女さんに初穂料を渡し、お守りを受け取る。俺と日和がお守りについてあれこれ言っている間に栄斗は御朱印を無事にいただけたらしく、噛みしめるように御朱印帳のページを見ていた。とりあえずこれで下鴨神社での予定は終了だろうか。
自主研修の予定表と腕時計を見比べる。おおよそ時間通りだが、若干押している。茅に絡まれたのが想定外だった。
「よし、それじゃあ行くわよ! いざ!」
授与所を後にして、美幸の先導で北西方向へ歩き出す。
下鴨神社の北西にはみたらし団子で有名な店があるらしい。下鴨神社に行くのならば外せないと、計画を立てている時に美幸が言っていた。境内を抜けて見えて来たあの店が件のみたらし団子発祥の店なのだろう。開店時間からまだそれほど経っていないと思われるが、既に賑わいを見せている。
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