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これで全員が揃った。急に、自分が場違いな気がしてたまらなくなってきた。本当に私がこんな所にいていいのだろうか。
「さて、それでは数日後に行う依頼について話そう。」
ルカスさんの言葉でその場の空気が変わった。仕事モードと言うのだろうか、全員の目線が鋭くなる。
「依頼者はコンセットにある大手旅行会社。先日から会社に差出人不明の予告状が届いているらしい。『次の船内パーティで死人が出る。』……という内容だ。」
コンセット……聞いたことのある街だ。周りを海に囲まれた島国でバカンスに最適なんだとか。そんなところにある会社から依頼なんて、もしかして彼らはとんでもなく凄い人達なのかもしれない。
それにしても、わざわざ予告状なんて出すなんて犯人は相当余裕らしい。
「これまた物騒だねー。んで、誰が行くの?」
「依頼内容としてはそいつらの発見と確保なんだが……フランク、アル、そしてケイ、行ってくれるか?」
ルカスさんはその三人に目線だけ送る。尋ねているところから考えると強制ではないようだ。
「任せてください、ルカスさん!!しっかりこなしてくるっす!!」
「承知しました。」
アルとケイさんは乗り気なようだ。だが一人、フランクさんは少し悩んでいるようだった。その様子を見たノアさんは、はっと思いついたように手を叩いた。
「フランク、そういえば君は船が苦手だよね。」
フランクさんの肩がぴくっと震えた。どうやらそうらしい。初耳だ。
強制でないのなら無理をする必要はなのではないか。なかなか答えを出さない彼に、少しハラハラしてしまう。すると、フードの下の彼と一瞬だけ目があった気がした。そして、フランクさんが口を開いた。
「問題ない、やれる。行かせてくれ。」
その言葉を聞いたルカスさんはにやりと口元を歪めた。少し悪い顔をしている。
「ありがとう。依頼の詳細は各々の部屋に送っておく。しっかりと目を通しておけ。
さて、次は……ミアの教育係についてだが、」
突然名前を呼ばれて少し驚いた。仕事の連絡はもうないのだろうか。意外とあっさりしている。
「この依頼が終わるまではジャックとノアの二人に任せる。順番はそちらで決めてくれ。」
ノアさんとはあまり話したことがない。少しドキドキしてくる。ジャックさんはさっき話したばかりなのできっと大丈夫だろう。
そんなことよりも、私は二人の時間を貰っているわけだ。この機会を無駄には出来ない。
「ジャックさん、ノアさん、よろしくお願いします。」
二人に向き合って真っ直ぐにそう伝える。
「こちらこそよろしくねー!いろんなこと沢山教えるから頑張ってね?」
「任されたからには、しっかりと務めさせて貰うよ。よろしくね、ミア。」
「よし、それではこれで会議は終了だ。教育係の二人は残ってくれ。話したい事がある。」
なんだろう。自分に関わることだから少し気になる。席を立つのを躊躇っている間に、他の三人は続々と移動を始めてしまう。
「姉さん?行かないんすか?」
アルが声をかけてきた。さすがに断ってまで残るのは不自然すぎるだろう。私は大人しく席を立ち、アル達に続いて部屋を出た。
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