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またしてもエレベーターに乗り、次は8階で止まった。この階に私の部屋があるらしい。
同じように長い廊下を歩いている時、私はずっと気になっていたことをアルバートさんに聞いた。
「あの、アルバートさん。」
「ん、なんすか?」
「なんで私に敬語なんですか?私の方が年下なのに……。」
それを聞いたアルバートさんはあぁ〜…と言うと頬を少し赤らめた。
「俺、あんまり女の人に慣れてないんすよ。お恥ずかしいことに……。あとは癖みたいなもんです!ここには年上の人しかいなかったんで…。もしかして、嫌だったっすか……?」
彼は反省した子犬のような顔でこちらを見てくる。体もガッチリしていて、身長も高いのにとても可愛らしく見える。
「別に嫌ってわけじゃないです。ちょっと不思議に思っただけで……。」
別に嫌では無いがそんな顔をされたら、嘘でも嫌、なんて言えるわけがない。それを聞いた彼はさっきとは打って変わってパッと表情を明るくした。とてもわかりやすい。
「よかったぁ…!あと、俺の事はアルって呼んでください!みんなにそう呼ばれてるんで!あ、敬語もなくていいっすよ!」
年上の人の事を敬語無しで、しかもあだ名で呼ぶのはどうなのだろうか……。でもまぁ、本人がそう言っているのだから従おう。
「……わかった。これからよろしくね、アル。」
アルはさらにキラキラとした笑みを深める。しっぽまで見えてきそうだ。
やがて、扉が見えてきた。1階ごとに一部屋しかないようだ。少し不便な気がする。
「ここが姉さんの部屋っすよ。中に専用の電話があるんでなんかあったらすぐに知らせてください。じゃあ、おやすみなさいっす!」
「ありがとう、おやすみなさい。」
手を振ってアルの後ろ姿を見送る。不気味なくらいに辺りは静寂に包まれている。それを振り切るように私は部屋のドアを開けた。
そこに広がっていた景色に、私はただただ唖然とする事しかできなかった。
私には到底住めないような、贅沢な空間がそこにあった。床にはふわふわのカーペット、広いお風呂、天蓋付きのベット。それこそ貴族の部屋を見ているようだった。本当にここで私が生活してもいいのだろうか。罪悪感すら感じる。
だが、少しおかしな点もある。例えばお風呂の壁がガラス張りになっていたり、一人部屋なのにベットがキングサイズだったりと、普通の部屋とは少しだけ違っている。
でもまぁ、入浴の際には部屋の鍵をかければいいし、ベットも大きいに越したことはないので問題ないだろう。
試しにベットに寝てみる。
ふかふかしている。御屋敷で働いていた頃は薄い布団で寝ていたので、身体中が痛くてたまらなかった。だが、その悩みもなくなると思うと涙が出そうだった。
(気持ちいい……)
余程緊張していたのだろう。私はそのまま眠ってしまった。
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