伝説になりたい

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 さみしい頭頂部にポコっとでたお腹を見ながら、仕事のできるできないに見た目は関係ないなとヨローナは思った。 「それで、彼女たちのデビューはいつ頃になりそうですかな?」  赤ら顔の男性は暑いのか、小さく団扇で煽ぎながらヨローナに訊いてきた。 「そうですね、春先にはいけるかと思います」 「では、東京か大阪あたりで大々的にデビューイベントを行いますか」  ヨローナは少し考えてから、意外な場所を示した。 「いえ、今回は岐阜県を考えています」 「はあ、岐阜ですか? 岐阜県なら隣の愛知県の名古屋とかの方が良くないですか?」 「いえ、あえて岐阜県なんです。囁きレベルの噂から、騒音レベルの伝説に変えていく方がインパクトが強いんです。日本のほぼ真ん中である岐阜県。ここから、西日本、東日本に波紋のように同じような彼女たちの噂を広げていくのです」 「はあ、なるほど。まあ国際的な伝説となっているヨローナ先生が仰るなら間違いないでしょう。では、春先に岐阜県でデビューさせましょう」  小さく首肯したヨローナは、部屋を出ていこうとして思い出したかのように振り向いた。 「そういえば、衣装の方は揃いそうですか?」 「はい、そっちもバッチリです。四十七着とはいえ、全員同じサイズなので意外と時間もお金もかからなくすみましたよ」 「色は?」 「ヨローナ先生のアドバイス通りの赤です。まさに照明が映えそうな色です」 「完成が楽しみですね。では、私はレッスンに戻ります。今日は、八百(やお)さんは?」  ヨローナは事務室の中を視線を巡らせながら尋ねた。
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